「最近、はしかが流行しているそうですね」
「そうそう、水族館で芸をしたり、アゥ、アゥって鳴いたり」
「それは『あしか』だろう!」
「どうもありがとうございました」
俺とタカシは、学校でよく漫才をしている。僕がボケでタカシがツッコミだ。
そのタカシが、コンビを解消しようと言い出した。
「何故なんだ? 一緒に漫才師になろうって言っただろう?」
「お前のボケは軽すぎるんだよ。俺がツッコミで何とかカバーしているが、これじゃあ素人のレベルから抜け出せない」
「これから頑張ればいいじゃないか。もう少しレベルの高いボケができるようになるから」
「無理だよ。お前は軽すぎるんだ。まあ、一回体を張るくらいの気持ちで大きなボケをかませば考えてやるんだが。お前には漫才師は無理だ」
「その言葉、忘れるなよ。僕は絶対に漫才師になってやる!!」
それから、僕は勉強に打ち込んだ。大きなボケをするには、知識が必要だ。大学にも合格した。有名大学の薬学部だ。そこでも僕は一生懸命勉強した。そして、卒業して試験にも合格した。
僕は、タカシを呼び出した。そして、胸を張って言った。
「ほら見てみろ。約束通り、漫才師になったぞ!」
「…………」
その言葉にタカシは何も答えることができなかった。僕は本気で怒った。
「馬鹿野郎! 『それは漫才師じゃなくて、薬剤師だ!』ってつっこむところだろう! 僕の一世一代のボケを無駄にしやがって!」
あとがき
まえぞうのショートショートへようこそ。全部読み切りで、短い時間で読める小説です。ラジオドラマにも採用されています。少しの間、楽しんでいって下さい。
ブログコミュニティ「edita(エディタ)」に参加しました。ショートショート倶楽部というコミュニティーを作っています。ショートショート好きのブロガーさん、是非参加して下さい。ブログでショートショートを公開している方は、エディター登録して頂ければ嬉しいです。
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2008年03月20日
2008年02月21日
2008年02月11日
しゃべる電化製品
『コーヒーができました』
『パンが焼けました』
コーヒーメーカーとトースターがほぼ同時に話した。最近ではほとんどの家電製品がしゃべるようになっている。昔のような無機質な電子音を聞くことなどなくなった。
電化製品の声やしゃべり方も本当の人間のようになっている。それだけではない。声質なども細かくチューニングすることができる。自分の好きな声に合わせることができるのだ。普通の人は製品によって声を変え、何がしゃべったのか区別できるようにしている。しかし僕は違う。全部同じ声、アヤの声に合わせている。アヤは一ヶ月前に別れた恋人だ。完全にふられたのだが、まだ忘れることができない。そこで寂しさを紛らわすため、声だけでも聞きたいと、電化製品の声を全部アヤの声にしたのだ。
しかし、最近はこの声が気に障るようになってきた。何しろ、電化製品が多すぎて、一日中同じ声を聞いているのだ。それを一ヶ月も続けるといらつくこともある。
『洗濯が終わりました』
ゆっくり朝食を摂ろうと思ったとたんにこれだ。
『録画を開始します』
『9時になりました』
『自動清掃を開始します』
立て続けにアヤの声がする。だんだんいらついてくる。
『音楽を再生します』
『食器の乾燥が終わりました』
今日はいつも以上に声が続く。本気でいらいらしてきた。
『電話です』
まただ。とにかく電話をとる。
「もしもし、私……アヤ。もう一度やり直せない?」
また同じ声。本気で腹が立ち大声で叫んだ。
「もう嫌だ! 聞きたくない!」
『電話が切れました』
決めた。今日中に声を全部変えてやる!
あとがき
『パンが焼けました』
コーヒーメーカーとトースターがほぼ同時に話した。最近ではほとんどの家電製品がしゃべるようになっている。昔のような無機質な電子音を聞くことなどなくなった。
電化製品の声やしゃべり方も本当の人間のようになっている。それだけではない。声質なども細かくチューニングすることができる。自分の好きな声に合わせることができるのだ。普通の人は製品によって声を変え、何がしゃべったのか区別できるようにしている。しかし僕は違う。全部同じ声、アヤの声に合わせている。アヤは一ヶ月前に別れた恋人だ。完全にふられたのだが、まだ忘れることができない。そこで寂しさを紛らわすため、声だけでも聞きたいと、電化製品の声を全部アヤの声にしたのだ。
しかし、最近はこの声が気に障るようになってきた。何しろ、電化製品が多すぎて、一日中同じ声を聞いているのだ。それを一ヶ月も続けるといらつくこともある。
『洗濯が終わりました』
ゆっくり朝食を摂ろうと思ったとたんにこれだ。
『録画を開始します』
『9時になりました』
『自動清掃を開始します』
立て続けにアヤの声がする。だんだんいらついてくる。
『音楽を再生します』
『食器の乾燥が終わりました』
今日はいつも以上に声が続く。本気でいらいらしてきた。
『電話です』
まただ。とにかく電話をとる。
「もしもし、私……アヤ。もう一度やり直せない?」
また同じ声。本気で腹が立ち大声で叫んだ。
「もう嫌だ! 聞きたくない!」
『電話が切れました』
決めた。今日中に声を全部変えてやる!
あとがき
2008年02月07日
分子の話
「お父さん。分子ってなぁに?」
息子が聞いてきた。そういうことに興味を持つ年頃になったと思うと、父親として嬉しい。それに私は化学者だ。自分の専門分野に子供が興味を示したということで、特別感慨深い。
「まわりを見渡してごらん。色んな物質……モノがあるだろう? これらはみんな分子という眼に見えない小さなものからできているんだ。分子は原子というものがいくつか繋がってできているんだけど、この分子がそのモノの性質を示す最小単位……一番小さいものなんだ」
小学生用に分かりやすく説明したいという気持ちと、化学者としての正確に説明したいという思いが交錯して、どのように説明すべきか迷ってしまう。
「とにかく、全部分子からできているんだ。いや、全部といっては語弊があるけど、共有結合という方法で結合しているものは全部分子と言ってもいい」
だんだん話に熱が入ってきた。何を言っているのか自分でも分からなくなる。
「例えば、コップ一杯の水があるだろう? あの中には、水分子が10の24乗って言っても分からないか……一億の一億倍の……とにかく沢山の水分子が入っている。分子っていうのはそれほど小さいんだ。分子の形ってのも面白くて、水の分子はブーメランみたいな形をして………………(中略)………………それほど分子って大事なものなんだ。わかったか?」
息子はきょとんとした顔をしている。ちょっと小学生には難しすぎる説明になってしまった。ここで理解できなかったせいで化学に興味を失ってしまったりしないだろうか? そんなことを考えていると、息子がまた聞いてきた。
「じゃあ、分母ってなぁに?」
あとがき
息子が聞いてきた。そういうことに興味を持つ年頃になったと思うと、父親として嬉しい。それに私は化学者だ。自分の専門分野に子供が興味を示したということで、特別感慨深い。
「まわりを見渡してごらん。色んな物質……モノがあるだろう? これらはみんな分子という眼に見えない小さなものからできているんだ。分子は原子というものがいくつか繋がってできているんだけど、この分子がそのモノの性質を示す最小単位……一番小さいものなんだ」
小学生用に分かりやすく説明したいという気持ちと、化学者としての正確に説明したいという思いが交錯して、どのように説明すべきか迷ってしまう。
「とにかく、全部分子からできているんだ。いや、全部といっては語弊があるけど、共有結合という方法で結合しているものは全部分子と言ってもいい」
だんだん話に熱が入ってきた。何を言っているのか自分でも分からなくなる。
「例えば、コップ一杯の水があるだろう? あの中には、水分子が10の24乗って言っても分からないか……一億の一億倍の……とにかく沢山の水分子が入っている。分子っていうのはそれほど小さいんだ。分子の形ってのも面白くて、水の分子はブーメランみたいな形をして………………(中略)………………それほど分子って大事なものなんだ。わかったか?」
息子はきょとんとした顔をしている。ちょっと小学生には難しすぎる説明になってしまった。ここで理解できなかったせいで化学に興味を失ってしまったりしないだろうか? そんなことを考えていると、息子がまた聞いてきた。
「じゃあ、分母ってなぁに?」
あとがき
2008年01月31日
番犬
うちの犬は、よく吠える。見知らぬ人が家に近づくと、大きな声で吠えまくるのだ。番犬としては優秀といってよいだろう。今のところ番犬が必要なほどの財産はないのだが、そのうち大もうけして金持ちになってやろうと全力で頑張っているところだ。それを達成したときには、心強い味方になってくれるだろう。
最近気がついたのだが、うちの犬が吠えるのは人間相手だけではないようだ。時々誰もいないのに、まるで人がいるように吠えまくることがある。どうやら、眼に見えない相手に向かって吠えているようだ。多分、悪霊などを追い払ってくれているのだろう。本当に頼もしい奴だ。
「ワン! ワン! ワン! ワン!」
また何かに向かって吠えている。
「ワン! ワン! ワン! ワン!」
周りに人かげはない。また眼に見えない悪霊にでも吠えているのだろう。
「ワン! ワン! ……………」
静かになった。どうやら追い払ってくれたようだ。
こうやって、俺を助けてくれている。後は俺が頑張って金持ちになるだけだ。
「まいったな。せっかくこの家に住み着こうと思ったんだが。あんな犬がいてはどうしようもない……」
福の神がぽつりと呟いた。
あとがき
最近気がついたのだが、うちの犬が吠えるのは人間相手だけではないようだ。時々誰もいないのに、まるで人がいるように吠えまくることがある。どうやら、眼に見えない相手に向かって吠えているようだ。多分、悪霊などを追い払ってくれているのだろう。本当に頼もしい奴だ。
「ワン! ワン! ワン! ワン!」
また何かに向かって吠えている。
「ワン! ワン! ワン! ワン!」
周りに人かげはない。また眼に見えない悪霊にでも吠えているのだろう。
「ワン! ワン! ……………」
静かになった。どうやら追い払ってくれたようだ。
こうやって、俺を助けてくれている。後は俺が頑張って金持ちになるだけだ。
「まいったな。せっかくこの家に住み着こうと思ったんだが。あんな犬がいてはどうしようもない……」
福の神がぽつりと呟いた。
あとがき
2008年01月26日
2007年12月16日
強運の持ち主
私は、凄く運がいい。世界一の強運の持ち主と言ってもいいだろう。マークシートのテストなら、適当にマークするだけで全問正解は間違いない。他のテストでも強運を発揮する。数学なら適当に数字を書けば正解になるし、他の科目でも適当に言葉を並べれば大抵正解する。
パソコンを使うようになって、気付いたことがある。何も考えずに適当にキーボードを叩けば、運良く意味の通る文章になるのだ。それで、私はブログを始めた。
内容なんて考えてもいない。目をつむってキーボードを叩くだけだ。それを読み返しもせずブログに投稿する。それでも、ちゃんと意味のある文章になっている筈だからだ。そして、記事数も400を超えた。
しかし、最近不安に思い始めた。私の強運はいつまで続くのだろう。人の持っている運の量は同じだと聞いたことあるか。キーボドたたくたけて意味なるような今日運がいつまでもも続く分け気言う孔かいうぽいうはいおfhんldまおうrbふぃうyは*ま3kdh
あとがき
パソコンを使うようになって、気付いたことがある。何も考えずに適当にキーボードを叩けば、運良く意味の通る文章になるのだ。それで、私はブログを始めた。
内容なんて考えてもいない。目をつむってキーボードを叩くだけだ。それを読み返しもせずブログに投稿する。それでも、ちゃんと意味のある文章になっている筈だからだ。そして、記事数も400を超えた。
しかし、最近不安に思い始めた。私の強運はいつまで続くのだろう。人の持っている運の量は同じだと聞いたことあるか。キーボドたたくたけて意味なるような今日運がいつまでもも続く分け気言う孔かいうぽいうはいおfhんldまおうrbふぃうyは*ま3kdh
あとがき
2007年11月03日
日本語変換ソフト
究極の日本語変換ソフト誕生
わが社では、究極とも言える新日本語変換ソフト『へんかん君』の開発に成功した。文脈を完全に解析し文章の意味まで理解できる『意味読み込みエンジン』を搭載したことにより、誤変換の解消が可能となった。『意味読み込みエンジン』では、文章の意味だけでなく、言葉の表現から、ビジネス文書、プライベートの文書などの文書の種類や、入力している人の年齢、性別などを瞬時に把握できる。これらの情報から、変換ワードを的確に推測できることから、誤変換が全くない、完全な日本語変換ソフトが完成した。
これまで、入力の妨げになっていた誤変換がなくなることにより、入力効率が格段に進歩し、日本語入力の新しい時代に突入する。
画期的な日本語変換ソフト『へんかん君』、いよいよ来月から全国一斉に半場医科医師!!
あとがき
わが社では、究極とも言える新日本語変換ソフト『へんかん君』の開発に成功した。文脈を完全に解析し文章の意味まで理解できる『意味読み込みエンジン』を搭載したことにより、誤変換の解消が可能となった。『意味読み込みエンジン』では、文章の意味だけでなく、言葉の表現から、ビジネス文書、プライベートの文書などの文書の種類や、入力している人の年齢、性別などを瞬時に把握できる。これらの情報から、変換ワードを的確に推測できることから、誤変換が全くない、完全な日本語変換ソフトが完成した。
これまで、入力の妨げになっていた誤変換がなくなることにより、入力効率が格段に進歩し、日本語入力の新しい時代に突入する。
画期的な日本語変換ソフト『へんかん君』、いよいよ来月から全国一斉に半場医科医師!!
あとがき
2007年10月26日
ら抜き言葉
「ただいま」
「あ、あなた、お帰りなさい。思ったより早かったわね」
「せっかくの飲みなのに、なんだか面白くなくて抜けてきた」
「珍しいわね。あなたでもそんなことがあるのね」
「まあな。それより何か食い物ないか? 少しお腹が空いて」
「ごめんなさい。今日は何も残ってないの」
「そうか、残念だな。帰れば何か食べれると思ったのに……」
「え! 今あなた『食べれる』って言わなかった?」
「ああ、言ったよ」
「あなた、いつも言っているじゃないの。ら抜き言葉なんて日本語じゃないって。そのあなたが『食べられる』じゃなくて『食べれる』って言うなんて」
「考えを変えたんだよ。言葉なんて時代によって変わるのが当たり前だってね。最近はかなり許容されてきているみたいだし、そのうちこの表現が普通になるのかもしれないと思って。逆に時代を先取りしているような気分で、敢えて使っているんだよ。でも、いざ使おうと思うと難しいもんだね」
「そうかしら。そんなに難しいとは思わないけど」
「いやー、凄く難しい」
「あなたにとっては、そうかもしれないわね」
「それより、本当にはがへったな。そうだ、確かここ辺にカステがあった筈だ。くくて見えないな。イトを点けてっと。あれ? お前しないか?」
あとがき
「あ、あなた、お帰りなさい。思ったより早かったわね」
「せっかくの飲みなのに、なんだか面白くなくて抜けてきた」
「珍しいわね。あなたでもそんなことがあるのね」
「まあな。それより何か食い物ないか? 少しお腹が空いて」
「ごめんなさい。今日は何も残ってないの」
「そうか、残念だな。帰れば何か食べれると思ったのに……」
「え! 今あなた『食べれる』って言わなかった?」
「ああ、言ったよ」
「あなた、いつも言っているじゃないの。ら抜き言葉なんて日本語じゃないって。そのあなたが『食べられる』じゃなくて『食べれる』って言うなんて」
「考えを変えたんだよ。言葉なんて時代によって変わるのが当たり前だってね。最近はかなり許容されてきているみたいだし、そのうちこの表現が普通になるのかもしれないと思って。逆に時代を先取りしているような気分で、敢えて使っているんだよ。でも、いざ使おうと思うと難しいもんだね」
「そうかしら。そんなに難しいとは思わないけど」
「いやー、凄く難しい」
「あなたにとっては、そうかもしれないわね」
「それより、本当にはがへったな。そうだ、確かここ辺にカステがあった筈だ。くくて見えないな。イトを点けてっと。あれ? お前しないか?」
あとがき
2007年10月14日
2007年10月03日
禁煙国家
「我が国の喫煙率は、5%程度で横ばい状態を続けております」
「まだ、5%もいるのか。喫煙率を1%以下に抑えて、禁煙国家宣言をするにはまだ時間がかかりそうだな」
「はい、残りの5%がとにかくしつこいのです。どんな手を打ってもタバコを吸うことを止めません。いっそのこと法律で禁止してはどうでしょうか?」
「それは駄目だ。法で規制するのではなく、国民が自分の意思でタバコを止める、それが禁煙国家の理想的な姿なのだ」
「では、禁煙をした国民に何か褒美を与えることにしてはどうでしょうか?」
「高額な税金を課し、喫煙可能箇所を激減し、タバコを吸う人間が白い眼で見られるように世論を操作した。5%の人間は、それでも喫煙を止めない頑固者だ。褒美くらいで、止めるわけがない」
「しかし、他に方法が……。禁煙したら一生遊んで暮らせるほどの褒美を与えれば止めるのでしょうが、そんな訳にはいかないし」
「一生遊んで暮らせるほどの褒美――それだ! その手で行こう」
「しかし、そんなことをしたら非喫煙者から凄い非難を浴びることになります」
「確かにそうだろう。しかし、我が国は禁煙国家になることを、国際的に約束しているのだ。その期限はせまっている。何とかしないと国際的な信用を失うことになる。その方が大問題だ。禁煙したものに、一生遊んで暮らせるだけの賞金を出す、これしか方法がない」
そして、禁煙者賞金法が施行された。
〔ある家庭での会話〕
「あなた、何してるの! あなたも早くタバコを吸い始めなさいよ!」
タバコを片手にした奥さんが叫ぶ。
「タバコ? 何でタバコなんか吸わなければならないんだ?」
「当たり前でしょ! タバコを吸い始めなければ禁煙できないじゃないの! ご近所もみんな吸い始めてるわよ!」
こうして日本は国際的な信用を失った。
あとがき
「まだ、5%もいるのか。喫煙率を1%以下に抑えて、禁煙国家宣言をするにはまだ時間がかかりそうだな」
「はい、残りの5%がとにかくしつこいのです。どんな手を打ってもタバコを吸うことを止めません。いっそのこと法律で禁止してはどうでしょうか?」
「それは駄目だ。法で規制するのではなく、国民が自分の意思でタバコを止める、それが禁煙国家の理想的な姿なのだ」
「では、禁煙をした国民に何か褒美を与えることにしてはどうでしょうか?」
「高額な税金を課し、喫煙可能箇所を激減し、タバコを吸う人間が白い眼で見られるように世論を操作した。5%の人間は、それでも喫煙を止めない頑固者だ。褒美くらいで、止めるわけがない」
「しかし、他に方法が……。禁煙したら一生遊んで暮らせるほどの褒美を与えれば止めるのでしょうが、そんな訳にはいかないし」
「一生遊んで暮らせるほどの褒美――それだ! その手で行こう」
「しかし、そんなことをしたら非喫煙者から凄い非難を浴びることになります」
「確かにそうだろう。しかし、我が国は禁煙国家になることを、国際的に約束しているのだ。その期限はせまっている。何とかしないと国際的な信用を失うことになる。その方が大問題だ。禁煙したものに、一生遊んで暮らせるだけの賞金を出す、これしか方法がない」
そして、禁煙者賞金法が施行された。
〔ある家庭での会話〕
「あなた、何してるの! あなたも早くタバコを吸い始めなさいよ!」
タバコを片手にした奥さんが叫ぶ。
「タバコ? 何でタバコなんか吸わなければならないんだ?」
「当たり前でしょ! タバコを吸い始めなければ禁煙できないじゃないの! ご近所もみんな吸い始めてるわよ!」
こうして日本は国際的な信用を失った。
あとがき
2007年09月20日
借り物競走
運動会の借り物競争が始まった。僕は走るのが得意だ。当然のように一番最初にテーブルに到着して封筒を取り、中の紙を見る。
『自分のお父さん』
それを見て、思わずガッツポーズをしてしまった。お父さんはすぐ横で僕のことを見ている。これで、一等賞間違いなしだ。
僕は、紙を見せながらお父さんに近寄った。そして、お父さんの手を引張って走り出そうとした。でも、お父さんは動かない。
「どうしたの? 早く来てよ」
そういうとお父さんは、下を向いた。そのとき、横にいたお母さんが言った。
「実は、この人はあなたの本当のお父さんじゃないの」
何のことかよくわからなかったけど、早くしなければ一等賞を採れない。僕は叫んだ。
「じゃあ、僕の本当のお父さんはどこにいるの?」
「あなたの本当のお父さんは、隣のおじさんよ」
それは大変だ。おじさんは運動会に来ていない。僕は慌てて家に向かって走り出した。そして、隣の家に行っておじさんを連れてきた。急いで学校に戻ったときには、競技は終了していた。当然、僕はビリだった。
運動会が終わった。僕のいる赤組は一点差で白組に負けた。僕が借り物競争でビリになったせいだ。
あのお父さんが本当のお父さんだったら……、そしたら白組に勝っていたのに。そう思うと悔しくて仕方なかった。
あとがき
『自分のお父さん』
それを見て、思わずガッツポーズをしてしまった。お父さんはすぐ横で僕のことを見ている。これで、一等賞間違いなしだ。
僕は、紙を見せながらお父さんに近寄った。そして、お父さんの手を引張って走り出そうとした。でも、お父さんは動かない。
「どうしたの? 早く来てよ」
そういうとお父さんは、下を向いた。そのとき、横にいたお母さんが言った。
「実は、この人はあなたの本当のお父さんじゃないの」
何のことかよくわからなかったけど、早くしなければ一等賞を採れない。僕は叫んだ。
「じゃあ、僕の本当のお父さんはどこにいるの?」
「あなたの本当のお父さんは、隣のおじさんよ」
それは大変だ。おじさんは運動会に来ていない。僕は慌てて家に向かって走り出した。そして、隣の家に行っておじさんを連れてきた。急いで学校に戻ったときには、競技は終了していた。当然、僕はビリだった。
運動会が終わった。僕のいる赤組は一点差で白組に負けた。僕が借り物競争でビリになったせいだ。
あのお父さんが本当のお父さんだったら……、そしたら白組に勝っていたのに。そう思うと悔しくて仕方なかった。
あとがき
2007年09月14日
色変換
ある日、突然、赤と青が入れ替わった。
赤いものが青く見え、青いものが赤く見えるようになったのだ。全ての人間が、一斉に同じ現象に見舞われ、世界中が混乱した。
自動販売機で飲み物を買うときにHOTとICEを間違えたり、広島カープ対中日ドラゴンズの試合でチームを間違えたり、動脈と静脈の血液を間違えたり、赤面している人と顔面蒼白な人を間違えたり、とにかく多くの問題が発生した。中でも深刻だったのが、信号である。赤と青を間違えることによる事故が多発したのだ。
これまで赤だったものを青に変えて赤く見えるようにし、青だったものを赤に変えて青く見えるようにしようという案も出たが、膨大な費用がかかるため見送られた。
結局、人々は赤く見えるものは青、青く見えるものは赤、と頭の中で置換しながら生活することになった。人間の適応力というのは大したもので、一年もするとその状態に慣れ、混乱は収まった。
そして、突然、黄色と緑が入れ替わった。黄色いものが緑色に見え、緑色のものが黄色く見えるようになったのだ。すでに、馴れていたこともあり、赤と青の時ほどの大混乱はなかった。人々は黄色と緑を置換することにすぐに適応した。
突然、紫とオレンジ色が入れ替わった。当然、人々はすぐに適応した。
突然、白と黒が入れ替わった。当然、人々はすぐに適応した。
そして、突然、赤と黄色が入れ替わった。昔の感覚で青く見える赤と、緑に見える黄色が変換されたため、昔の感覚で青に見えるものが黄色で、緑に見えるものが赤となったのだ。さすがに、ややこしく、多少の混乱があったものの、人々は適応していった。
突然、オレンジ色と青が入れ替わった。
突然、白と緑が入れ替わった。
それからも、度々色の変換が起こったが、混乱もなく順応していった。
もう色による混乱は起こらないものと誰もが思っていた。
ある日、世界中が大混乱に陥った。
突然、全ての色が元に戻ってしまったのだ。
あとがき
赤いものが青く見え、青いものが赤く見えるようになったのだ。全ての人間が、一斉に同じ現象に見舞われ、世界中が混乱した。
自動販売機で飲み物を買うときにHOTとICEを間違えたり、広島カープ対中日ドラゴンズの試合でチームを間違えたり、動脈と静脈の血液を間違えたり、赤面している人と顔面蒼白な人を間違えたり、とにかく多くの問題が発生した。中でも深刻だったのが、信号である。赤と青を間違えることによる事故が多発したのだ。
これまで赤だったものを青に変えて赤く見えるようにし、青だったものを赤に変えて青く見えるようにしようという案も出たが、膨大な費用がかかるため見送られた。
結局、人々は赤く見えるものは青、青く見えるものは赤、と頭の中で置換しながら生活することになった。人間の適応力というのは大したもので、一年もするとその状態に慣れ、混乱は収まった。
そして、突然、黄色と緑が入れ替わった。黄色いものが緑色に見え、緑色のものが黄色く見えるようになったのだ。すでに、馴れていたこともあり、赤と青の時ほどの大混乱はなかった。人々は黄色と緑を置換することにすぐに適応した。
突然、紫とオレンジ色が入れ替わった。当然、人々はすぐに適応した。
突然、白と黒が入れ替わった。当然、人々はすぐに適応した。
そして、突然、赤と黄色が入れ替わった。昔の感覚で青く見える赤と、緑に見える黄色が変換されたため、昔の感覚で青に見えるものが黄色で、緑に見えるものが赤となったのだ。さすがに、ややこしく、多少の混乱があったものの、人々は適応していった。
突然、オレンジ色と青が入れ替わった。
突然、白と緑が入れ替わった。
それからも、度々色の変換が起こったが、混乱もなく順応していった。
もう色による混乱は起こらないものと誰もが思っていた。
ある日、世界中が大混乱に陥った。
突然、全ての色が元に戻ってしまったのだ。
あとがき
2007年09月06日
占い嫌い
朝出勤して更衣室に入ると、同僚のOLたちがなにやら騒いでいた。
「見て! 今日素晴らしい出会いがあるでしょうだって!」
そんな言葉が聞こえてきた。どうやら占いの話をしているようだ。その中のひとりアカネが私に近づいてきて言った。
「マキのことも占ってあげましょうか?」
「遠慮しておくわ」
私は素っ気なく言った。しかしアカネは引き下らない。
「この携帯サイトの占いよく当たるのよ。名前を入力するだけで今日の運勢がわかるの。簡単だからマキも占ってあげる」
「だから、占わなくていいって言ってるでしょ!」
つい口調が荒くなった。
「もしかしてマキ、占いが嫌いなの?」
「そう、嫌いなの」
嫌いというレベルではない。私は占いを激しく嫌悪しているのだ。昔、両親が占い師の言葉を信じて事業に失敗した。それから占いを憎むようになった。雑誌などの占いコーナーも見ないだけでなく、ページごと破り捨てるほどだ。
「やっぱり占ってみようよ。本当に当たるんだから。マキの占い嫌いも直るかもしれないよ」
「だから、嫌だって言ってるでしょ!」
思わず大声で叫んでしまった。するとアカネは眼に涙を浮かべ、絞り出すように声を出した。。
「……そんな言い方しなくてもいいじゃない……」
その光景を見ていた同僚たちが集まってきた。彼女たちは一様に私に批難の眼差しを向けている。まずい状況だ。これは腹をくくるしかない。慌ててアカネに言った。
「アカネごめんね。あんな言い方して。いいわよ私のこと占っても」
そう言うと、アカネは涙を浮かべたまま私の眼をじっと見て言った。
「分かった……許してあげる。でも、もうサイトを閉じちゃった。マキ、自分の携帯で見てよ。教えてあげるから」
「う、うん」
私は携帯を取り出し、アカネの言うとおりに操作した。そして、目的の占いサイトに辿り着いた。
入力欄に自分の名前を入力して、『占う』と書いてあるボタンを押した。画面が切り替わる瞬間、思わず眼をつぶってしまった。やはり、占いなど見たくない。しかし、この状況では、そうも言ってられない。
ゆっくりと眼を開き、画面に表示されている『今日のあなたの運勢』を見た。そして、そこに書いてある文章を恐る恐る口にした。
「今日、あなたは自分の意に反したことを無理矢理させられそうです。気をつけましょう」
あとがき
「見て! 今日素晴らしい出会いがあるでしょうだって!」
そんな言葉が聞こえてきた。どうやら占いの話をしているようだ。その中のひとりアカネが私に近づいてきて言った。
「マキのことも占ってあげましょうか?」
「遠慮しておくわ」
私は素っ気なく言った。しかしアカネは引き下らない。
「この携帯サイトの占いよく当たるのよ。名前を入力するだけで今日の運勢がわかるの。簡単だからマキも占ってあげる」
「だから、占わなくていいって言ってるでしょ!」
つい口調が荒くなった。
「もしかしてマキ、占いが嫌いなの?」
「そう、嫌いなの」
嫌いというレベルではない。私は占いを激しく嫌悪しているのだ。昔、両親が占い師の言葉を信じて事業に失敗した。それから占いを憎むようになった。雑誌などの占いコーナーも見ないだけでなく、ページごと破り捨てるほどだ。
「やっぱり占ってみようよ。本当に当たるんだから。マキの占い嫌いも直るかもしれないよ」
「だから、嫌だって言ってるでしょ!」
思わず大声で叫んでしまった。するとアカネは眼に涙を浮かべ、絞り出すように声を出した。。
「……そんな言い方しなくてもいいじゃない……」
その光景を見ていた同僚たちが集まってきた。彼女たちは一様に私に批難の眼差しを向けている。まずい状況だ。これは腹をくくるしかない。慌ててアカネに言った。
「アカネごめんね。あんな言い方して。いいわよ私のこと占っても」
そう言うと、アカネは涙を浮かべたまま私の眼をじっと見て言った。
「分かった……許してあげる。でも、もうサイトを閉じちゃった。マキ、自分の携帯で見てよ。教えてあげるから」
「う、うん」
私は携帯を取り出し、アカネの言うとおりに操作した。そして、目的の占いサイトに辿り着いた。
入力欄に自分の名前を入力して、『占う』と書いてあるボタンを押した。画面が切り替わる瞬間、思わず眼をつぶってしまった。やはり、占いなど見たくない。しかし、この状況では、そうも言ってられない。
ゆっくりと眼を開き、画面に表示されている『今日のあなたの運勢』を見た。そして、そこに書いてある文章を恐る恐る口にした。
「今日、あなたは自分の意に反したことを無理矢理させられそうです。気をつけましょう」
あとがき
2007年07月27日
ラジオ体操
朝六時半、近くの広場に近所の人たちが全員集まる。
「いくら何でもやりすぎですよね」
「そうですね」
隣のおじさんの言葉に相槌を打つ。
国民の健康増進のため、全国民にラジオ体操への参加が義務づけられた。さすがに大反対の声が挙がったが、政府はこれを押し切ったのだ。
『ラジオ体操第一』
ラジオから音楽が流れ始めた。俺は以前から朝早く起きて運動するのが日課だったので、最初はラジオ体操法案も「まあいいか」と思っていた。しかし法案が具体的になるにつれて、さすがにやりすぎだと思うようになった。
とりあえず、音楽に合わせて体操をする。頭を真っ白にして、ただ体を動かすだけ。そうでないとやっていられない。
実際、ラジオ体操によって様々な問題が起きている。生産性が低下し、日本経済も大きな打撃を受けている。それはそうだ。朝から疲労しきって仕事どころではない。ラジオ体操に使う時間も大きなロスだ。
とにかく、体だけを動かす。どのくらい時間が経ったのかわからない。それでも体を動かす。
後どれくらいで終わるのか、ラジオの音に耳を傾けてみる。
『ラジオ体操第八十三』
まだ、半分も終わっていない。今日も長い朝が続く。
あとがき
「いくら何でもやりすぎですよね」
「そうですね」
隣のおじさんの言葉に相槌を打つ。
国民の健康増進のため、全国民にラジオ体操への参加が義務づけられた。さすがに大反対の声が挙がったが、政府はこれを押し切ったのだ。
『ラジオ体操第一』
ラジオから音楽が流れ始めた。俺は以前から朝早く起きて運動するのが日課だったので、最初はラジオ体操法案も「まあいいか」と思っていた。しかし法案が具体的になるにつれて、さすがにやりすぎだと思うようになった。
とりあえず、音楽に合わせて体操をする。頭を真っ白にして、ただ体を動かすだけ。そうでないとやっていられない。
実際、ラジオ体操によって様々な問題が起きている。生産性が低下し、日本経済も大きな打撃を受けている。それはそうだ。朝から疲労しきって仕事どころではない。ラジオ体操に使う時間も大きなロスだ。
とにかく、体だけを動かす。どのくらい時間が経ったのかわからない。それでも体を動かす。
後どれくらいで終わるのか、ラジオの音に耳を傾けてみる。
『ラジオ体操第八十三』
まだ、半分も終わっていない。今日も長い朝が続く。
あとがき
2007年07月13日
耳なし
「昔、平家の怨霊に取り憑かれたことがあるんだ。そのままでは死んでしまうというとき、、あるお寺の和尚さんが助けてくれた。和尚さんと小僧が全身に般若心経を写し、怨霊から見えないようにしてくれたんだ。そして、怨霊がやってきても絶対に返事をしてはいけないと言われた。その夜、平家の怨霊がやってきた。『姿が見えない。あいつはどこに行ったのか』怨霊の声が聞こえたが、声を出さないようにした。『仕方がない。証拠に耳だけでも持って帰ろう』怨霊はそう言って耳だけを切り取って持って行った。耳にだけ、般若心経を写し忘れていたんだ」
「それで、そんなタヌキみたいになったんだ!」
「コラ! タヌキだなんて失礼だ。僕はれっきとしたネコ型ロボットなんだぞ!」
あとがき
「それで、そんなタヌキみたいになったんだ!」
「コラ! タヌキだなんて失礼だ。僕はれっきとしたネコ型ロボットなんだぞ!」
あとがき
2007年07月09日
ある男の願望
僕は、女性に全く相手にされない。恋人が欲しいという願望は、人一倍あるのだが、それが現実になったことは一度もない。
それもこれも、この頭のせいだ。若いときから極端に髪の毛が少ない。この頭を見ただけで女性は嫌悪感を抱くようだ。
僕は長年の研究の結果、この状態を変える方法をあみ出した。名付けて『女性が髪の毛の少ない男を好きになるマシン』を発明したのだ。この装置からは、一種の電磁波が発生する。その影響下にある女性は、髪の毛が少ない男を好きになるという画期的な発明品だ。その電磁波は地球全体を覆う。つまり、世界中の女性が髪の毛の少ない男を求めるようになるのだ。僕は、装置の電源を入れた。
僕は、女性に全く相手にされない。街には、スキンヘッドにした男たちが溢れ、女性は彼らに夢中になった。原因は髪の毛だけではなかったようだ。
それもこれも、この脂ぎった顔のせいだ。この顔を見ただけで女性は嫌悪感を抱くようだ。
僕は、新しい発明をした。名付けて『女性が脂ぎった顔の男をを好きになるマシン』だ。僕は装置の電源を入れた。
僕は、女性に全く相手にされない。街には、顔に脂を塗りたくった男たちが溢れ、女性は彼らに夢中になった。
それもこれも、この口臭のせいだ。この匂いで女性は嫌悪感を抱くようだ。
僕は、新しい発明をした。名付けて『女性が口の臭い男を好きになるマシン』だ。僕は装置の電源を入れた。
僕は、女性に全く相手にされない。街には、臭い香水を口にした男たちが溢れ、女性は彼らに夢中になった。
それもこれも、この目つきのせいだ。人を睨むように見つめてしまう視線に女性は嫌悪感を抱くようだ。
僕は、新しい発明をした。名付けて…………。
あとがき
それもこれも、この頭のせいだ。若いときから極端に髪の毛が少ない。この頭を見ただけで女性は嫌悪感を抱くようだ。
僕は長年の研究の結果、この状態を変える方法をあみ出した。名付けて『女性が髪の毛の少ない男を好きになるマシン』を発明したのだ。この装置からは、一種の電磁波が発生する。その影響下にある女性は、髪の毛が少ない男を好きになるという画期的な発明品だ。その電磁波は地球全体を覆う。つまり、世界中の女性が髪の毛の少ない男を求めるようになるのだ。僕は、装置の電源を入れた。
僕は、女性に全く相手にされない。街には、スキンヘッドにした男たちが溢れ、女性は彼らに夢中になった。原因は髪の毛だけではなかったようだ。
それもこれも、この脂ぎった顔のせいだ。この顔を見ただけで女性は嫌悪感を抱くようだ。
僕は、新しい発明をした。名付けて『女性が脂ぎった顔の男をを好きになるマシン』だ。僕は装置の電源を入れた。
僕は、女性に全く相手にされない。街には、顔に脂を塗りたくった男たちが溢れ、女性は彼らに夢中になった。
それもこれも、この口臭のせいだ。この匂いで女性は嫌悪感を抱くようだ。
僕は、新しい発明をした。名付けて『女性が口の臭い男を好きになるマシン』だ。僕は装置の電源を入れた。
僕は、女性に全く相手にされない。街には、臭い香水を口にした男たちが溢れ、女性は彼らに夢中になった。
それもこれも、この目つきのせいだ。人を睨むように見つめてしまう視線に女性は嫌悪感を抱くようだ。
僕は、新しい発明をした。名付けて…………。
あとがき
2007年06月27日
儲け話
「おい、そんなに真面目に仕事なんかするな」
「あ、先輩! どうしたんですかいきなり」
「いや、お前が仕事ばっかりしているからな。仕事なんてしなくていいんだぞ。そんな時間があったら金を儲ける方法を考えろ。楽して儲ける方法を」
「楽して儲かるなんて、ありえませんよ。旨い話には気をつけろって親にも言われてるんですよ」
「馬鹿だな。旨い話に騙されるのは、金の出所がよく分からない話を信用するからだ。出所がはっきりしていて、いくらでも湧いてくる金があるだろう? そいつを頂戴すればいいんだよ」
「いくらでも湧いてくる?」
「そうだ。俺たちのように選ばれた人間だけが手にすることのできる金だ。いくら頂戴しても大丈夫な金」
「そのお金の出所って……」
「決まってるだろう? 国民の税金ってやつだよ」
あとがき
「あ、先輩! どうしたんですかいきなり」
「いや、お前が仕事ばっかりしているからな。仕事なんてしなくていいんだぞ。そんな時間があったら金を儲ける方法を考えろ。楽して儲ける方法を」
「楽して儲かるなんて、ありえませんよ。旨い話には気をつけろって親にも言われてるんですよ」
「馬鹿だな。旨い話に騙されるのは、金の出所がよく分からない話を信用するからだ。出所がはっきりしていて、いくらでも湧いてくる金があるだろう? そいつを頂戴すればいいんだよ」
「いくらでも湧いてくる?」
「そうだ。俺たちのように選ばれた人間だけが手にすることのできる金だ。いくら頂戴しても大丈夫な金」
「そのお金の出所って……」
「決まってるだろう? 国民の税金ってやつだよ」
あとがき
タグ:ショートショート
2007年05月31日
天才チンパンジー
朝、目覚めるとチンパンジーになっていた。ぼんやりとした頭で昨晩の記憶を辿る。確かひとりで酒を飲みながらテレビを観ていた。そうだ、思いだした。テレビで天才チンパンジーの特集をやっていたんだ。マイちゃんというチンパンジーが、足し算をする内容だった。誰かが問題を出すと、紙に答の数字を書くというものだ。かなり酔っていた俺はそれを観て叫んだ。
「いいよな、チンパンジーは! それくらいで天才なんて呼ばれて。あーあ、俺もチンパンジーになりたい!」
人間の中では馬鹿の方に分類されている俺は、ついそう言ったのだ。その後のことは覚えていない。神様か何かが望みを叶えてくれたのかもしれない。まあ、人間に未練がある訳でもないのでチンパンジー生活でも始めてみようと思った。
とりあえず天才チンパンジーを目指すことにした。慣れない体で動きがぎこちなく、特に細かい動きが難しい。天才チンパンジーになるには数字が書けなければならないが、チンパンジーの手というのはそういうことに向いていないらしい。かなりの訓練の後、何とか数字だけは書けるようになった。
それから外に出た。チンパンジーがいるということで少し騒ぎになったようだが、俺はおとなしく捕まった。そして動物園に送られた。
俺は飼育員の前で地面に指で数式を書いた。
「2+3=5」
飼育員はそれを見て驚いた。俺は続けて書いた。
「3+4=7」
飼育員の目が輝いたのが、はっきりと見えた。俺は天才チンパンジーとして、大々的に売り出され、その動物園の目玉となった。
注目を浴びたのを確認して、俺は引き算を披露した。あのマイちゃんにはできない芸当だ。これで、完全に勝った。天才チンパンジーと言えば俺のことを指すようになり、以前人気だったマイちゃんは忘れ去られていった。
注目されるというのは気持ちがいい。俺は、天才チンパンジー生活を思いっきり満喫した。人間時代には感じたことのない幸福感に満たされていた。
そんなとき、テレビを観ていた飼育員の目が曇ったことに気付いた。画面を見てみると、あのマイちゃんが映っているではないか。完全に忘れさられた筈なのに、またテレビに出ている。
映像では以前と同じように、出された問題の答えを書くマイちゃんの姿が映し出されている。その問題を見て俺は驚いた。そして、画面の下にはキャッチコピーがはっきりと書かれていた。
『天才チンパンジーのマイちゃん。分数の足し算に成功!』
事態を理解して、俺は呆然となった。完全な敗北だ。これで、もう俺に注目が集まることは二度とない……。
あとがき
「いいよな、チンパンジーは! それくらいで天才なんて呼ばれて。あーあ、俺もチンパンジーになりたい!」
人間の中では馬鹿の方に分類されている俺は、ついそう言ったのだ。その後のことは覚えていない。神様か何かが望みを叶えてくれたのかもしれない。まあ、人間に未練がある訳でもないのでチンパンジー生活でも始めてみようと思った。
とりあえず天才チンパンジーを目指すことにした。慣れない体で動きがぎこちなく、特に細かい動きが難しい。天才チンパンジーになるには数字が書けなければならないが、チンパンジーの手というのはそういうことに向いていないらしい。かなりの訓練の後、何とか数字だけは書けるようになった。
それから外に出た。チンパンジーがいるということで少し騒ぎになったようだが、俺はおとなしく捕まった。そして動物園に送られた。
俺は飼育員の前で地面に指で数式を書いた。
「2+3=5」
飼育員はそれを見て驚いた。俺は続けて書いた。
「3+4=7」
飼育員の目が輝いたのが、はっきりと見えた。俺は天才チンパンジーとして、大々的に売り出され、その動物園の目玉となった。
注目を浴びたのを確認して、俺は引き算を披露した。あのマイちゃんにはできない芸当だ。これで、完全に勝った。天才チンパンジーと言えば俺のことを指すようになり、以前人気だったマイちゃんは忘れ去られていった。
注目されるというのは気持ちがいい。俺は、天才チンパンジー生活を思いっきり満喫した。人間時代には感じたことのない幸福感に満たされていた。
そんなとき、テレビを観ていた飼育員の目が曇ったことに気付いた。画面を見てみると、あのマイちゃんが映っているではないか。完全に忘れさられた筈なのに、またテレビに出ている。
映像では以前と同じように、出された問題の答えを書くマイちゃんの姿が映し出されている。その問題を見て俺は驚いた。そして、画面の下にはキャッチコピーがはっきりと書かれていた。
『天才チンパンジーのマイちゃん。分数の足し算に成功!』
事態を理解して、俺は呆然となった。完全な敗北だ。これで、もう俺に注目が集まることは二度とない……。
あとがき
タグ:ショートショート
2007年05月22日
健康オタク
朝の散歩の途中、立ちくらみがして、その場にしゃがみ込んだ。体がとてつもなく怠くて、意識も朦朧としてくる。どうしたのだろう? 最近体調が悪い。病気にでもなったのかとも思ったが、俺に限ってそんな筈はない。
俺は健康には人一倍気を使っている。こうやって毎朝一時間散歩しているのも健康のためだ。当然、食事にも気を使っている。食物繊維の多い野菜を摂ることを心掛けている。各種ビタミン類やミネラルも不足しないようサプリメントで摂取している。アントシアニンやリコピン、カテキンやカロチンだってちゃんと補充しているのだ。これだけ気を使っているのだから病気になる筈がない。
そうは思っても強烈な倦怠感は治まる気配がない。だんだん気が遠くなっていく。結局、俺はその場で意識を失った。
気がつくと、病院のベットの上だった。右腕から伸びているチューブは点滴につながっている。どうやら本当に病気だったようだ。ベットの横に医者の姿が見えた。
「俺は、どんな病気なんですか?」
医者はその言葉に答えず無言で俺を見下ろしていた。何故か無性に悔しい。俺のように、健康のため節制している人間が病気になるなんて理不尽な気だ。好きなものを好きなだけ食べていても、健康な奴がいるというのに。自分の食生活を振り返る。糖分は肥満や糖尿病の原因になるので控えてきた。分解して糖になる炭水化物も同様だ。高脂血症やコレステロールの原因になる脂肪分や、肝臓に負担をかけるタンパク質なども摂らないようにしてきた。これほど大変な摂生生活をしていたのに病気になってしまうなんて。俺は神を恨んだ。
医者は、そばにいた看護婦に「後は任せた」と言うように、目配せをして部屋を出て行った。
「俺の病気は何なんですか?」
俺は、看護婦に向かって大声で訊いた。
すると看護婦は、俺の眼を見て小さな声でつぶやいた。
「栄養失調です」
あとがき
俺は健康には人一倍気を使っている。こうやって毎朝一時間散歩しているのも健康のためだ。当然、食事にも気を使っている。食物繊維の多い野菜を摂ることを心掛けている。各種ビタミン類やミネラルも不足しないようサプリメントで摂取している。アントシアニンやリコピン、カテキンやカロチンだってちゃんと補充しているのだ。これだけ気を使っているのだから病気になる筈がない。
そうは思っても強烈な倦怠感は治まる気配がない。だんだん気が遠くなっていく。結局、俺はその場で意識を失った。
気がつくと、病院のベットの上だった。右腕から伸びているチューブは点滴につながっている。どうやら本当に病気だったようだ。ベットの横に医者の姿が見えた。
「俺は、どんな病気なんですか?」
医者はその言葉に答えず無言で俺を見下ろしていた。何故か無性に悔しい。俺のように、健康のため節制している人間が病気になるなんて理不尽な気だ。好きなものを好きなだけ食べていても、健康な奴がいるというのに。自分の食生活を振り返る。糖分は肥満や糖尿病の原因になるので控えてきた。分解して糖になる炭水化物も同様だ。高脂血症やコレステロールの原因になる脂肪分や、肝臓に負担をかけるタンパク質なども摂らないようにしてきた。これほど大変な摂生生活をしていたのに病気になってしまうなんて。俺は神を恨んだ。
医者は、そばにいた看護婦に「後は任せた」と言うように、目配せをして部屋を出て行った。
「俺の病気は何なんですか?」
俺は、看護婦に向かって大声で訊いた。
すると看護婦は、俺の眼を見て小さな声でつぶやいた。
「栄養失調です」
あとがき
タグ:ショートショート

