2008年03月29日

はぐれそうな天使

 天使の一団が地球を離れようとしていた。

「この星の人間たちは、本当に酷かったな」

「ああ、神の意思を完全に無視して、やりたい放題だ」

「何とか、この愚かな人間たちを導いてやろうとしたけど、無理だった」

「今まで、色んな知的生命体をみてきたが、ここまで残酷な奴らはいなかった」

「新しく知的人類が誕生したという星に早く移ろう」

「そうだ! こんな星放っておいて、新しい人類を導こう」

 天使の中のひとりだけが、浮かない顔をしていた。まわりの天使に理由を聞かれ、戸惑いながらポツリと言った。

「そんなに酷い人間かな? 僕にはそんなに残酷には思えないんだけど……」

「何言ってるんだ。他の生物を次々殺し、同じ人間同士でも殺しあう。そんな奴らだぞ」

「でも……それは仕方なくやっただけで、本質はいい人たちだと思うんだけど」

「じゃあ、君だけここに残るか?」

「どうしよう……。そうだ、僕はもう一度この星の人間を観察してくる。そして、思ったよりいい人たちなら、ここに残る。本当に残酷な人たちならみんなと一緒に次の星に行く」

「お前、本当に物好きだな」

「じゃあ、僕はもう一度地球を見てくるから、みんなは先に行ってて」

「わかったよ。早くしろよ」


『次のニュースです。先日捕獲された人間に似た羽の生えた動物ですが、解剖の結果、地球上の他の生命体とは構造が大きく異なっていることが判明しました。専門家の間では、早くも白熱した議論が……』



あとがき
posted by まえぞう at 16:42| Comment(8) | TrackBack(3) | SFっぽいショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月11日

潜伏期間

 それは、いきなりの出来事だった。宇宙人から通信があったのだ。

「地球の皆さん、すみません。地球を探査するときに、間違って凶悪なウィルスを漏らしてしまいました。感染力が非常に強いウィルスで、すでに地球人全員に感染してしまいました」

「しかし、地球上でそのような病気の報告はまだありません」

「それが、このウィルスが凶悪な原因でもあります。発症までの潜伏期間が長いのです。そのため、知らない間に多くの人間に感染してしまうという特徴があります。そして、潜伏期間を過ぎて発症すると、間違いなく死んでしまうのです。このような事態にしてしまって本当に申し訳ありません。現在、治療法はないのですが、急いで治療法を確立します」

 地球は大パニックになった。
 宇宙からもたらされた凶悪なウィルス。地球全滅の危機だ。
 しかし、結局何も起こらないまま時間が過ぎていった。
 二十年後、忘れかけた頃にまた宇宙人から通信が入った。

「すみません。全精力を傾けて治療法を探していますがまだ見つかりません。もうしばらく待って下さい」

 どうやら、二十年はまだ潜伏期間だったようだ。いつ発症するかわからない。また、地球は大パニックになった。
 しかし、結局何も起こらないまま時間が過ぎていった。
 百年後、また宇宙人から通信が入った。

「すみません。まだ治療法が確立できていません。でも大至急治療法をみつけます」

 地球の代表が答えた。

「ウィルスとは言いますが、我々地球人には何の被害も出ていません。あなた方の通信のたびに我々はパニックに陥りました。もう、こんなイタズラは止めて下さい」

「イタズラではありません。ウィルスは本当に広がっているのです。我々は急いで治療法を見つけるよう本当に努力しているのです。でも、こんな短期間では、まだ……」

 短期間? 百年が短期間だと? 地球の代表は一瞬怒りかけたのだが、あることに気づいた。もしかしたら……

「あのー、このウィルスの潜伏期間とは一体どのくらいなのですか?」

「地球時間で言うと……三千年くらいです」


あとがき
posted by まえぞう at 20:14| Comment(6) | TrackBack(0) | SFっぽいショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月06日

片道タイムマシン

「よし、片道タイムマシンの完成だ!」

「博士、凄いですね。タイムマシンを発明するなんて。これで過去にも未来にも自由に行けるんですね」

「何言ってるんだ? 過去に行けるわけがないじゃないか。過去に行って自分の母親を殺したらどうなる? ちょっと考えればわかるだろう? そんなパラドックスが起こらないように宇宙はできているんだ」

「じゃあ、このタイムマシンは?」

「過去には行けない。未来だけだ。だから片道タイムマシンと呼んでいるんだ。相対性理論からも明らかなように、未来に行くことは可能なんだ。何のパラドックスも起きない。この装置は一瞬にして、設定した未来に行けるというものだ」

「じゃあ、その装置で未来に行っても、戻ってくることはできないんですね。それじゃあ意味ないじゃないですか。未来でどんな株が上がるか、競馬でどの馬が勝つか、それを見ても戻ってこれないんじゃ……」

「全く、君って人間は、どうしてそんなに下衆なことしか考えられないんだ。純粋に未来を見てみたいという知的好奇心が沸かないのか?」

「未来は見てみたいですが、戻ってこれないんですよ」

「いいじゃないか。君は今の時代に何か未練があるのか? 私はこの時代には未練はない。戻って来ることができなくても未来をみたい。君も一緒にみてみないか」

「うーん、まあ僕も今にあまり未練はないし……。わかりました、お付き合いしますよ。一緒に未来に行きましょう」

「では、早速旅立とう。まずは五年後の世界だ」

 博士と助手のふたりはタイムマシンに乗り込み、ダイヤルを五年後にセットして、スタートボタンを押した。

「もう着いたぞ。五年後の世界だ。ちょっと外の様子をみてみよう」

 本当にあっという間だった。ふたりはタイムマシンを降りて、町にでた。

「博士。あまり変わってないですね」

「まあ、五年だからな。それほど大きな変化はないようだな」

 そのとき、ひとりの男が博士に声をかけた。

「もしかしたら、片道タイムマシンを発明された博士じゃないですか?」

「そうだが……何か?」

「やっぱりそうだったんですね。あの素晴らしい理論と設計図、今では博士を知らない人などいませんよ。片道タイムマシンも量産され始めて、すでに未来に旅立った人もいるくらいです」

「そうか。私も有名人になったのか」

 自分が有名になり、博士はご満悦のようだ。

「さあ、もっと未来に行ってみよう! 次はこの十年後だ」

 博士と助手は、もう一度タイムマシンに乗り込み、スタートボタンを押した。そして、十年後の様子を見ようと町に出た。

「博士、何だか人が少ないですね」

「そうだな、妙に人が少ない。何があったんだろう?」

 博士は、通りかかった男に聞いた。

「何故、こんなに人が少ないのですか?」

「片道タイムマシンってやつが出回って、沢山の人間が未来にいったからな。この時代に残っている人間は少ないんだ」

「そうですか」

 自分の発明が多くの人に利用されたことを知り、博士はご満悦のようだ。

「さあ、もっと未来に行ってみよう! また十年後だ」

 博士と助手は、もう一度タイムマシンに乗り込み、スタートボタンを押した。そして、十年後の様子を見ようと町に出た。

「ぜんぜん人がいませんね」

「そうだな」

 ふたりは長い間歩き回って、やっとひとりの男を見つけた。

「どうして、人がいないんですか?」

「ああ、みんな未来に行ってしまって、この時代に残っているのは俺みたいな変わり者だけさ」

 ますます、自分の発明が利用されていったことを知って、博士はご満悦だった。

「さあ、もっと未来に行ってみよう! また十年後だ」

 博士と助手は、もう一度タイムマシンに乗り込み、スタートボタンを押した。そして、十年後の様子を見ようと町に出た。

「人はいませんね。それに町も荒廃している」

「そうだな、完全にゴーストタウンだ」

 ふたりはかなり探し回ったが、この時代で人を見つけることはできなかった。
 全人類が自分の発明品を使ったことを知り、博士はご満悦だった。

「さあ、もっと未来に行ってみよう! また十年後だ」

 博士と助手は、もう一度タイムマシンに乗り込み、スタートボタンを押した。そして、十年後の様子を見ようと町に出た。

「完全に荒れ放題ですね。もはや人が住むことすらできない」

「探すまでもないな。この時代にも人はいない」

「さあ、もっと未来に行ってみよう! また十年後だ」

 博士と助手はそれからも、未来への旅行を繰り返した。しかし、どの時代にも人は見当たらず、町は荒れていく一方だった。

「博士、どうします? まだ未来に行きますか?」

「当たり前だろ。この時代にいても、建物は崩壊しているし食べ物もない。他に人がいない。生きていくことすらできない。どんどん未来に行って、人のいる時代にたどり着かないと」

 それからも、ふたりは何度も未来に進んだ。しかし、全く人はいない。

「一体、みんなどの未来にいるのだろう? 片道タイムマシンを使った人ばかりの時代に行けば、私は大歓迎されるはずなのに。いつになったらその時代にたどり着けるのだろうか? とにかくもっと未来に行ってみよう」

 助手の男がふと思った。

(片道タイムマシンを使った世界中の人たちも、僕たちと同じなのかもしれない。人がいる時代を探してずっと未来に進み続けているのかも。全員がそうしているとしたら……)

 でも助手は何も言わなかった。未来で人々の賞賛を受けることで頭が一杯の博士を落胆させたくなかったのだ。それに、このまま人のいない時代にいても死がが待っているだけだ。駄目でも未来に行くしか選択肢はない。

「さあ、もっと未来に行ってみよう! また十年後だ」

 博士が意気揚々と言った。



あとがき
posted by まえぞう at 21:05| Comment(8) | TrackBack(0) | SFっぽいショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月11日

リセットスイッチ

 あなたは、過去に戻って人生をもう一度やり直したいと思ったことはありませんか? ゲームのように人生にもリセットボタンがあったらいいと。実は、人間にもちゃんとリセットボタンがあるのです。
 私は東洋医学を中心に、人体の研究をしていました。そのとき、発見したのです。リセットボタン、そしてセーブボタンに相当するツボがあることを。リセットのツボを押すと
、前回セーブしたところから人生をやり直すことができるのです。右の脇腹にリセットのツボ、左の脇腹にセーブのツボがあります。でもこのことは誰にも話していません。私だけの秘密です。

 私は、人生を謳歌している。好きなときに好きなことを好きなだけできる、そんな生活をしているのだ。それもこれもリセットボタンのお陰だ。失敗したら、いつでもやり直すことができる。金に困ることもない。ギャンブルだろうが株だろうが、思い通りに儲けることができるのだ。

 昨夜も朝まで遊びまくった。眼が覚めたときはもう夕方だ。取り敢えず、ネットでニュースを見てみる。その中に気になるニュースがあった。

『競馬で史上最高額の超万馬券的中!!』

 正直、金が欲しい訳ではない。ただ、史上最高という言葉が気になる。史上最高の超万馬券を当てた、これは私の人生の輝かしい1ページ飾るのに相応しい出来事のような気がしたのだ。

(前回セーブしたのは、二日前か。その間に特別なできごとが起きたわけではないな)

 私はリセットボタンを押して、超万馬券を当てることに決めた。


「うぉー、爽快な気分だ」

 私は自宅に戻ってシャワーを浴びながら、思わず叫んでしまった。そう、超万馬券を当ててきたのだ。まわりの人間の羨む眼が自分に集中する。これが生きている醍醐味を味わえる最高の瞬間なのだ。

「ガタン」

 部屋で何か物音がした。そう思った瞬間、バスルームのドアが勢いよく開けられた。そこには、見知らぬ中年男が立っていた。包丁を手にして。

(やばい!)

 多分、競馬場からつけてきたのだろう。俺が超万馬券を当てたのを見て、奪い取るつもりだ。俺は目立ち過ぎたのかもしれない。

(早くリセットボタンを……)

 しかし、男はその隙を与えてくれなかった。一瞬のためらいもなく、私の胸を包丁で突き刺したのだ。凄い勢いで血が噴き出す。体中の感覚がなくなり、意識が朦朧とする。気がつくと男の姿はなかった。家捜しでもしているのだろう。

(何とかリセットボタンを押さなければ……)

 このままでは、間違いなく死ぬ。しかし、手は全く動かない。私は壁を背もたれの様にして、座り込んでいる。しかし、背中にも尻にも足にも全くその感触はない。目の前にある大きな鏡を見て、自分の体勢が確認できるだけだ。
 私は、その鏡を見て気がついた。右の脇腹付近に、蛇口がある。手は使えなくても、この蛇口でリセットボタンを押すことはできないか! 何とか体を動かしてみる。自分では動いた感覚はない。しかし、鏡を見ると少しずつ蛇口に近づいている。

(いいぞ、もう少しだ)

 普段は、皮膚に触れた感触でツボの位置を探り当てている。しかし、今の私には感覚がない。鏡を見て、位置を合わせるしかない。難しいことは分かっているが、それしか方法がないのだ。
 私はとにかくもがいた。死にものぐるいでもがいた。鏡をみると、蛇口が脇腹に触れていた。少しツボの位置とはずれている様な気がするが、とにかく蛇口に触れている。もう少しだ。薄れゆく意識の中で、最後の力を振り絞って体を動かそうとする。

『カチッ』

 頭の中で、スイッチが入った感触。どうやら上手くいったようだ。

(…………)

 しかし、状況は何一つ変わらなかった。おかしい。確かにリセットスイッチを押したはずなのに。
 そのとき気付いた。私は鏡を見ながらスイッチを押した。だが、鏡では左右が逆になるのだ。今押したのは、右脇腹のリセットスイッチではなく、左脇腹のセーブスイッチだったのだ。そんなことも分からないほど意識が朦朧としていた。

 薄れかけていく視覚がもう一度鏡を捉えた。反対の脇腹の近くにタオル掛けがある! これでリセットスイッチを押すのだ。私は、もう一度死にものぐるいでもがいた。意識は薄れ、もうそのことしか考えることができない。リセットスイッチを押すのだ……リセットスイッチを……。


あとがき
posted by まえぞう at 17:37| Comment(6) | TrackBack(0) | SFっぽいショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月26日

バイオハザード

 大きな地震が、その研究施設をおそった。

「大丈夫か!」

「何か異常がないか、すぐに点検しろ!」

 施設内に大きな声が響く。所員が慌てるのも無理はない。ここは、遺伝子操作の研究施設なのだ。遺伝子操作によって生み出された、有害な細菌などを多く扱っている。それらが、施設外に漏れることがあると大変なことになる。いわゆるバイオハザードだ。

「ナンバー6ラボの壁に亀裂が入っています!」

「何? で、漏洩物は?」

「BO17E2が、漏れ出した可能性があります!」

「何だと……、そんな……」

 危惧していたバイオハザードが発生してしまったのだ。BO17E2は遺伝子操作によって産み出された感染力が非常に強い細菌だ。薬品に対する耐性も強く、治療薬は全くない。そんな細菌が、束縛から解き放たれたのだ。

 BO17E2は、瞬く間に全世界に広がった。そして、全人類が発症してしまった。絶対に治ることのない不治の病を。

「くそ! 痒い! 何とかならないのか!」

「うるさい! 痒いのは、お前だけじゃないんだぞ! みんな我慢しているんだ!」

「そんなこと言ったって、これは我慢できない!」

BO17E2――強力な感染力と薬耐性を持つ白癬菌。このときから、人類は水虫を抱えたまま生きていくことを余儀なくされた。



あとがき
posted by まえぞう at 18:16| Comment(13) | TrackBack(0) | SFっぽいショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月10日

双子のパラドックス

「何! HKR27を双子のパラドックスの証明に使うだと! 何を馬鹿なことを言ってるんだ! 最新のロケットをそんな意味のないことに使うだなんて」

「HKR27は、光の速さの99.5%の速度まで加速、運行し、同じ速度で戻ってくることができます。この場合、往復して帰ってくるHKR27の船内の時間は、地球上での経過時間の10分の1になります。一般相対性理論からの帰結です。パラドックスでも何でもない。そして、それが正しいという証拠は山ほどあります」

「ああ、そんなことは常識だ。だから意味がないと言っているんだ。前回のHKR26に積んだ原子時計の進み方でも完全に証明された筈だ」

「そうです。常識です……物理学者の間では。でも、一般の人の意識はどうでしょう。もうすぐ亜光速運航の時代が始まります。しかし、人々の意識は昔のままなのです。我々がいくら証拠をだしても、原子時計の遅れを示しても、人々の意識はかわりません。イメージが湧かないのです。このまま亜光速運航が始まったら、人々は戸惑い大混乱が起きるでしょう」

「それで、双子を使う訳か……」

「そうです。双子のひとりをHKR27に乗せます。もうひとりは地球で暮らします。地球の時間で10年後に、HKR27が地球に戻るのです。HKR27の中では、一年しか時間が経っていません。そして、双子を比較した映像を全世界に流すのです。ロケットに乗っていた方が明らかに若いということを。そうすれば、人々もイメージが湧く筈です」

「それはそうかもしれないが……」

「HKR27には、人間ひとりと一年間分の食料、水、酸素を運ぶ能力があります。今やらなければならないのです。HKRが帰ってくる10年後、それが亜光速時代の幕開けになるのです。全人類を新しい時代に適応させるという重大な役目を果たすのです」

「分かった。そうしよう」

 こうして、双子のパラドックス計画が開始された。実験に選ばれたのは、二十歳の一卵性双生児の兄弟だ。HKR27出航前のふたりを映像に残す。もちろん瓜二つで、見分けが付かない。
 そして、兄の方がHKR27に乗ることになった。その間弟は地球で暮らす。もちろんふたりには、多額の報酬が払われた。

 そして、兄を乗せた最新型ロケットHKR27が出航した。

「これで、人々の意識が変わる。十年後、歳をとった弟と、若々しい兄を眼にすることで、人間の意識が変わるのだ。言ってみれば、新しい時代に向けての人類の進化だ」

 実験の計画者は、そう高らかに宣言した。


 地球に残った弟は、実験の報酬で貰った金で何年間も遊びまくっていた。彼の友達は言った。

「お前、全然変わらないな。昔のままだ」

「当たり前さ。毎日楽しいことだけをして暮らしているんだ。心が若々しいんだよ。だから歳を取ったように見えない」

 一方、ロケットに乗った兄は、苦悩していた。狭い宇宙船の中での孤独な生活。今にでも頭がおかしくなりそうだった。そのため、短い期間で彼の外見は急速に老けていった。

 そして、地球時間で十年後、HKR27は地球に帰還した…………。


あとがき
posted by まえぞう at 17:20| Comment(6) | TrackBack(1) | SFっぽいショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月24日

番犬機能

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 ペットロボットに新機能

 犬型ペットロボット『メタルドッグ』に番犬機能が搭載された。かつて犬は侵入者に対して吠えることで番犬と呼ばれるセキュリティ機能を果たしていた。しかし不審者だけではなく、知らない人間全てに吠えてしまうという問題を抱えていた。初めて招いた客や宅配業者にも吠えまくることから、犬を番犬として飼うという文化は廃れていった。
 今回、我社は新開発の悪人探知センサーを用いることにより、かつての番犬の欠点を廃除したセキュリティ機能を持たせることに成功した。これは、悪人が侵入した場合にのみ吠えるというもので悪意のない客などには吠えることがないという画期的な技術である。
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 この広告を見てすぐに購入した。しかし届いたのはとんでもない欠陥品で、初期不良として修理のため、すぐにメーカーに送り返した。そろそろメーカーから連絡があるころだ。

 ちょうどその時電話がなった。

「もしもし」

「メタルドッグ株式会社の者ですが」

 やはりメーカーからだった。

「ご返品されました製品の検査を行いましたが、どこにも異常はありませんでした」

「何言ってんだ!一日中吠え続けるんだぞ!欠陥品に決まっているじゃないか!」

「お客様の御自宅に不審者が隠れているという可能性はありませんか?」

「そう思って探し回った。どこにもいなかった」

「そうですか……。念のためお聞きしますが、メタルドッグはどこに向かって吠えていましたでしょうか?」

「どこって、俺だよ。俺に向かって吠えまくるんだから、うるさくってたまったもんじゃねぇ」

「……そうですか……実はたまにそのような事例が……。お客様との相性が悪い……というか……」

「相性が悪い? 何じゃそりゃ! 馬鹿なこと言ってると、ぶっ殺すぞ! このやろう!」

あとがき
posted by まえぞう at 10:29| Comment(4) | TrackBack(0) | SFっぽいショートショート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする