「よし、片道タイムマシンの完成だ!」
「博士、凄いですね。タイムマシンを発明するなんて。これで過去にも未来にも自由に行けるんですね」
「何言ってるんだ? 過去に行けるわけがないじゃないか。過去に行って自分の母親を殺したらどうなる? ちょっと考えればわかるだろう? そんなパラドックスが起こらないように宇宙はできているんだ」
「じゃあ、このタイムマシンは?」
「過去には行けない。未来だけだ。だから片道タイムマシンと呼んでいるんだ。相対性理論からも明らかなように、未来に行くことは可能なんだ。何のパラドックスも起きない。この装置は一瞬にして、設定した未来に行けるというものだ」
「じゃあ、その装置で未来に行っても、戻ってくることはできないんですね。それじゃあ意味ないじゃないですか。未来でどんな株が上がるか、競馬でどの馬が勝つか、それを見ても戻ってこれないんじゃ……」
「全く、君って人間は、どうしてそんなに下衆なことしか考えられないんだ。純粋に未来を見てみたいという知的好奇心が沸かないのか?」
「未来は見てみたいですが、戻ってこれないんですよ」
「いいじゃないか。君は今の時代に何か未練があるのか? 私はこの時代には未練はない。戻って来ることができなくても未来をみたい。君も一緒にみてみないか」
「うーん、まあ僕も今にあまり未練はないし……。わかりました、お付き合いしますよ。一緒に未来に行きましょう」
「では、早速旅立とう。まずは五年後の世界だ」
博士と助手のふたりはタイムマシンに乗り込み、ダイヤルを五年後にセットして、スタートボタンを押した。
「もう着いたぞ。五年後の世界だ。ちょっと外の様子をみてみよう」
本当にあっという間だった。ふたりはタイムマシンを降りて、町にでた。
「博士。あまり変わってないですね」
「まあ、五年だからな。それほど大きな変化はないようだな」
そのとき、ひとりの男が博士に声をかけた。
「もしかしたら、片道タイムマシンを発明された博士じゃないですか?」
「そうだが……何か?」
「やっぱりそうだったんですね。あの素晴らしい理論と設計図、今では博士を知らない人などいませんよ。片道タイムマシンも量産され始めて、すでに未来に旅立った人もいるくらいです」
「そうか。私も有名人になったのか」
自分が有名になり、博士はご満悦のようだ。
「さあ、もっと未来に行ってみよう! 次はこの十年後だ」
博士と助手は、もう一度タイムマシンに乗り込み、スタートボタンを押した。そして、十年後の様子を見ようと町に出た。
「博士、何だか人が少ないですね」
「そうだな、妙に人が少ない。何があったんだろう?」
博士は、通りかかった男に聞いた。
「何故、こんなに人が少ないのですか?」
「片道タイムマシンってやつが出回って、沢山の人間が未来にいったからな。この時代に残っている人間は少ないんだ」
「そうですか」
自分の発明が多くの人に利用されたことを知り、博士はご満悦のようだ。
「さあ、もっと未来に行ってみよう! また十年後だ」
博士と助手は、もう一度タイムマシンに乗り込み、スタートボタンを押した。そして、十年後の様子を見ようと町に出た。
「ぜんぜん人がいませんね」
「そうだな」
ふたりは長い間歩き回って、やっとひとりの男を見つけた。
「どうして、人がいないんですか?」
「ああ、みんな未来に行ってしまって、この時代に残っているのは俺みたいな変わり者だけさ」
ますます、自分の発明が利用されていったことを知って、博士はご満悦だった。
「さあ、もっと未来に行ってみよう! また十年後だ」
博士と助手は、もう一度タイムマシンに乗り込み、スタートボタンを押した。そして、十年後の様子を見ようと町に出た。
「人はいませんね。それに町も荒廃している」
「そうだな、完全にゴーストタウンだ」
ふたりはかなり探し回ったが、この時代で人を見つけることはできなかった。
全人類が自分の発明品を使ったことを知り、博士はご満悦だった。
「さあ、もっと未来に行ってみよう! また十年後だ」
博士と助手は、もう一度タイムマシンに乗り込み、スタートボタンを押した。そして、十年後の様子を見ようと町に出た。
「完全に荒れ放題ですね。もはや人が住むことすらできない」
「探すまでもないな。この時代にも人はいない」
「さあ、もっと未来に行ってみよう! また十年後だ」
博士と助手はそれからも、未来への旅行を繰り返した。しかし、どの時代にも人は見当たらず、町は荒れていく一方だった。
「博士、どうします? まだ未来に行きますか?」
「当たり前だろ。この時代にいても、建物は崩壊しているし食べ物もない。他に人がいない。生きていくことすらできない。どんどん未来に行って、人のいる時代にたどり着かないと」
それからも、ふたりは何度も未来に進んだ。しかし、全く人はいない。
「一体、みんなどの未来にいるのだろう? 片道タイムマシンを使った人ばかりの時代に行けば、私は大歓迎されるはずなのに。いつになったらその時代にたどり着けるのだろうか? とにかくもっと未来に行ってみよう」
助手の男がふと思った。
(片道タイムマシンを使った世界中の人たちも、僕たちと同じなのかもしれない。人がいる時代を探してずっと未来に進み続けているのかも。全員がそうしているとしたら……)
でも助手は何も言わなかった。未来で人々の賞賛を受けることで頭が一杯の博士を落胆させたくなかったのだ。それに、このまま人のいない時代にいても死がが待っているだけだ。駄目でも未来に行くしか選択肢はない。
「さあ、もっと未来に行ってみよう! また十年後だ」
博士が意気揚々と言った。
【あとがき】
久しぶりに、長い話になってしまいました。読み返してみましたが、とにかく「長い」という印象しか……
まえぞうのショートショートへようこそ。全部読み切りで、短い時間で読める小説です。ラジオドラマにも採用されています。少しの間、楽しんでいって下さい。
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2008年03月06日
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ほんとうにこうなるかもしれませんね。片道タイムマシンができると。
目のつけどころに感心しました。
どんどん、未来にいけるうちは、いいんですが…
どうもです。
もし、片道タイムマシンができたら、私も未来を見たい衝動にかられそうです。
タイムマシンのエネルギーは内緒です(ばらしたら命を狙われるので……)
でも、エネルギーは充分すぎるほどあります。多分、宇宙の終わりまで行けるでしょう。
ありがとうございます。
やはり、ショートショートとSFの相性はいいようです。