まえぞうのショートショートへようこそ。全部読み切りで、短い時間で読める小説です。ラジオドラマにも採用されています。少しの間、楽しんでいって下さい。

ブログコミュニティ「edita(エディタ)」に参加しました。ショートショート倶楽部というコミュニティーを作っています。ショートショート好きのブロガーさん、是非参加して下さい。ブログでショートショートを公開している方は、エディター登録して頂ければ嬉しいです。


2008年02月11日

しゃべる電化製品

『コーヒーができました』

『パンが焼けました』

 コーヒーメーカーとトースターがほぼ同時に話した。最近ではほとんどの家電製品がしゃべるようになっている。昔のような無機質な電子音を聞くことなどなくなった。
 電化製品の声やしゃべり方も本当の人間のようになっている。それだけではない。声質なども細かくチューニングすることができる。自分の好きな声に合わせることができるのだ。普通の人は製品によって声を変え、何がしゃべったのか区別できるようにしている。しかし僕は違う。全部同じ声、アヤの声に合わせている。アヤは一ヶ月前に別れた恋人だ。完全にふられたのだが、まだ忘れることができない。そこで寂しさを紛らわすため、声だけでも聞きたいと、電化製品の声を全部アヤの声にしたのだ。
 しかし、最近はこの声が気に障るようになってきた。何しろ、電化製品が多すぎて、一日中同じ声を聞いているのだ。それを一ヶ月も続けるといらつくこともある。

『洗濯が終わりました』

 ゆっくり朝食を摂ろうと思ったとたんにこれだ。

『録画を開始します』

『9時になりました』

『自動清掃を開始します』

 立て続けにアヤの声がする。だんだんいらついてくる。

『音楽を再生します』

『食器の乾燥が終わりました』

 今日はいつも以上に声が続く。本気でいらいらしてきた。

『電話です』

 まただ。とにかく電話をとる。

「もしもし、私……アヤ。もう一度やり直せない?」

 また同じ声。本気で腹が立ち大声で叫んだ。

「もう嫌だ! 聞きたくない!」

『電話が切れました』

 決めた。今日中に声を全部変えてやる!



【あとがき】

 いつかはこんな世の中になるんでしょうか?
posted by まえぞう at 17:46| Comment(2) | TrackBack(0) | 現代劇風ショートショート
この記事へのコメント
へんに丁寧っていうのも、他人行儀だったかもしれません。
「電話よ」とか「シチューができたけど…」って、タメ口はダメですが、親しみのある言い方だったら、多少は、違ってたかも……
でも、それじゃ、よけいに辛くなったかナァ……
うーん、男女の機微については、苦手な私です。
Posted by ヤスノリ at 2008年02月12日 19:35
ヤスノリさん

「何してるの! この豚野郎!」
「早く止めなさい! このろくでなし!」
みたいなのはどうでしょう?
マニアには喜ばれるかも?
Posted by まえぞう at 2008年02月21日 18:32
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/83518614

この記事へのトラックバック