まえぞうのショートショートへようこそ。全部読み切りで、短い時間で読める小説です。ラジオドラマにも採用されています。少しの間、楽しんでいって下さい。

ブログコミュニティ「edita(エディタ)」に参加しました。ショートショート倶楽部というコミュニティーを作っています。ショートショート好きのブロガーさん、是非参加して下さい。ブログでショートショートを公開している方は、エディター登録して頂ければ嬉しいです。


2007年11月10日

双子のパラドックス

「何! HKR27を双子のパラドックスの証明に使うだと! 何を馬鹿なことを言ってるんだ! 最新のロケットをそんな意味のないことに使うだなんて」

「HKR27は、光の速さの99.5%の速度まで加速、運行し、同じ速度で戻ってくることができます。この場合、往復して帰ってくるHKR27の船内の時間は、地球上での経過時間の10分の1になります。一般相対性理論からの帰結です。パラドックスでも何でもない。そして、それが正しいという証拠は山ほどあります」

「ああ、そんなことは常識だ。だから意味がないと言っているんだ。前回のHKR26に積んだ原子時計の進み方でも完全に証明された筈だ」

「そうです。常識です……物理学者の間では。でも、一般の人の意識はどうでしょう。もうすぐ亜光速運航の時代が始まります。しかし、人々の意識は昔のままなのです。我々がいくら証拠をだしても、原子時計の遅れを示しても、人々の意識はかわりません。イメージが湧かないのです。このまま亜光速運航が始まったら、人々は戸惑い大混乱が起きるでしょう」

「それで、双子を使う訳か……」

「そうです。双子のひとりをHKR27に乗せます。もうひとりは地球で暮らします。地球の時間で10年後に、HKR27が地球に戻るのです。HKR27の中では、一年しか時間が経っていません。そして、双子を比較した映像を全世界に流すのです。ロケットに乗っていた方が明らかに若いということを。そうすれば、人々もイメージが湧く筈です」

「それはそうかもしれないが……」

「HKR27には、人間ひとりと一年間分の食料、水、酸素を運ぶ能力があります。今やらなければならないのです。HKRが帰ってくる10年後、それが亜光速時代の幕開けになるのです。全人類を新しい時代に適応させるという重大な役目を果たすのです」

「分かった。そうしよう」

 こうして、双子のパラドックス計画が開始された。実験に選ばれたのは、二十歳の一卵性双生児の兄弟だ。HKR27出航前のふたりを映像に残す。もちろん瓜二つで、見分けが付かない。
 そして、兄の方がHKR27に乗ることになった。その間弟は地球で暮らす。もちろんふたりには、多額の報酬が払われた。

 そして、兄を乗せた最新型ロケットHKR27が出航した。

「これで、人々の意識が変わる。十年後、歳をとった弟と、若々しい兄を眼にすることで、人間の意識が変わるのだ。言ってみれば、新しい時代に向けての人類の進化だ」

 実験の計画者は、そう高らかに宣言した。


 地球に残った弟は、実験の報酬で貰った金で何年間も遊びまくっていた。彼の友達は言った。

「お前、全然変わらないな。昔のままだ」

「当たり前さ。毎日楽しいことだけをして暮らしているんだ。心が若々しいんだよ。だから歳を取ったように見えない」

 一方、ロケットに乗った兄は、苦悩していた。狭い宇宙船の中での孤独な生活。今にでも頭がおかしくなりそうだった。そのため、短い期間で彼の外見は急速に老けていった。

 そして、地球時間で十年後、HKR27は地球に帰還した…………。


【あとがき】

 久しぶりにSFっぽいものを書こうとしたら、こんなのになりました。気合いだけ入って、妙に疲れてしまいました。
 なお、科学的な間違いがあっても気にしないでください(願)。
posted by まえぞう at 17:20| Comment(6) | TrackBack(1) | SFっぽいショートショート
この記事へのコメント
なんだか、新しい時代への適応への道は遠いかもしれません。しかも、果てしなく。
 科学的な間違いよりも、まず、報酬先払いということ自体が間違ってるのでは(爆笑)

 今回も面白いお話、ありがとうございます。
Posted by 若端 丈 at 2007年11月11日 23:02
あのぉ、ロケットの中をハーレムにするとか…
ぁっ、でも、かえって老け込むかナァ……

m(__)mすいません、まえぞうさんの「世界」をこわすようなことを…………
Posted by ヤン at 2007年11月12日 18:31
若端さんの言う通りですね。こういうものの報酬は先払いするものと思ってる限り人間は進歩しないのかもしれません。仕事はその報酬や待遇ではなく、内容に意味があると思っています。えらそうな言い方ですが、私はそう思います。
Posted by ひろ at 2007年11月14日 06:59
若端 丈さん

報酬先払いじゃなければ、実験に協力してくれる人がいなくなりそうで……
Posted by まえぞう at 2007年11月26日 18:00
ヤンさん

ハーレムか……。昔は憧れていたなぁ。今? 今は体力が……。
Posted by まえぞう at 2007年11月26日 18:02
ひろさん

>仕事はその報酬や待遇ではなく、内容に意味がある
その通りだとは思うのですが、俗人の私はどうしても欲が捨て切れなくて……
Posted by まえぞう at 2007年11月26日 18:04
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/65706029

この記事へのトラックバック

( 相対性理論 )についての最新のブログのリンク集
Excerpt: 相対性理論に関する最新ブログ、ユーチューブなどネットからの口コミ情報をまとめてみると…
Weblog: クチコミコミュニケーション
Tracked: 2007-11-10 20:55