僕は、薄暗いバーのカウンターでミチコと話をしていた。
「私、すっごい方向音痴なの」
ミチコがぽつりと言う。今だ、このタイミングだ。僕は意を決して言った。
「大丈夫だよ。これからは僕が道案内するから。……人生の道案内も」
「え?」
ミチコは驚いた表情でこちらを見ている。大きく開いた瞳が潤んでいる。
「それって……、プロポーズ?」
「そうだよ」
「嘘……。本当に? ありがとう……。こんな私でよかったら」
ミチコの眼から涙がこぼれた。
僕は心の中でガッツポーズをした。プロポーズは成功したようだ。
「今日はうちに来てくれるね」
「うん」
僕の部屋のベットで、二人は初めて結ばれた。そしてベットの中で将来について語り合った。
「でも、私と結婚したら大変よ」
「どうして?」
「私、本当に方向音痴だから」
「そんなことか。さっきも言っただろ。僕が道案内するって」
「でも……、あなたの想像以上だと思うの。私の方向音痴は」
「どんなに方向音痴でも関係ないよ。その位のことで僕の気持ちは変わらない」
「ありがとう。信じていいのね」
「うん。僕たちはずっと一緒だよ」
「嬉しいわ。……あ、ごめんなさい。ちょっとお手洗いに行ってくる」
そう言ってミチコは、ベットから出て行った。僕は幸せに浸りながら、ミチコの裸の後ろ姿を見つめた。
(おかしい)
ミチコがトイレに向かって、10分以上経っている。まだ帰ってこない。
「ミチコ!」
大声で叫んだが、返事がない。僕は慌ててトイレに行き、ドアを開けた。
「いない……」
ミチコの姿は何処にもなかった。一体どういうことだ? 神隠しにでもあったのか。その時、電話が鳴った。
(ミチコか?)
そう思い、急いで電話に出た。相手は警察だった。
『ミチコさんという女性が、裸で街を歩いているところを保護しました。あなたに連絡して欲しいということですが』
「え? ミチコ。そこにいるんですか? ミチコと変わって下さい」
『分かりました。今変わります』
「ミチコ、一体どういうことなんだ?」
『ごめんなさい。トイレに行こうとして間違って玄関のドアを開けて外に出たみたいなの。すぐ気がついたんだけど、あなたのうちが分からなくなって……。道に迷ってるところを警察の人が……』
もしかして、ミチコの言ってた方向音痴ってこのこと?
僕は、ミチコにプロポーズしたことを少し後悔した。
【あとがき】
この作品は、ショートショート選手権Finalに応募した作品です。『方向音痴の女が登場する』というプロットで開催されました。
まえぞうのショートショートへようこそ。全部読み切りで、短い時間で読める小説です。ラジオドラマにも採用されています。少しの間、楽しんでいって下さい。
文章修行中です。長編小説を書いてみて自分の文書力、表現力のなさに愕然としました。もっと力を磨こうとしている最中です。そのため、現在は超まったり更新状態です。
文章修行中です。長編小説を書いてみて自分の文書力、表現力のなさに愕然としました。もっと力を磨こうとしている最中です。そのため、現在は超まったり更新状態です。
2006年02月27日
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よほど幸運と友達に恵まれてきたのでしょうね。
それはともかく、わざわざ裸で出したのは主人公とまったく連絡が取れない状態にするためか、とにやりとしました(向こうでは、「『迷ってしまってどうしましょ』という状況を作り上げているところが好感持てます」と表現)。今の世の中、ケータイも持参せず小銭も持たずという状況を作るのは、これしかないでしょうねぇ。
とりあえず、「もしかしてまえぞうさん不参加か」と思っていたので、反省しきり。
このミチコさんって「らんま1/2」の良牙くんみたいですね。ぷぷ。
一人でトイレに行くにも迷うって。
この二人の結婚生活にも興味シンシンです。(笑
ところで、このお話よくわからないのですが(すみません…)、えっと、単にミチコが過度な方向音痴ってことですか? それとも何かあります? すみません、前者しか思いつかなくて……。
愛こそすべて。…Cinosでした
GPSを脳内に仕組んでも道に迷ったりして(ぉぃ
らんま1/2の響良牙を思い出しました。
方向音痴なカーナビ。
終
これまで生きてこられたのは、運が良かったからだと思います。でもこれからもその幸運が続くとは思えないので。どうなるのでしょう?
別に正体を隠そうなどとは思ってなかったのですが。やはり作者当ては難しいですね。瀬川さんが二作投稿されていたことは知っていましたが、結局絞りきれませんでした。
感想ありがとうございます&おめでとうございます。
確かに天然ボケですね。軽い天然ボケは可愛くて好きなのですが、ここまで行くと引いちゃいます。
実際にここまでの方向音痴の人っていないでしょう。街中を裸で歩いている女性をまだ見たことないので(どこかにいないかなー)。
あの天才高橋留美子さんの創ったキャラを連想して頂くなんて。恐れ多いというか……。
ミチコさんは、単に方向音痴が酷いだけの単純なキャラです。
単に過度の方向音痴というだけです。それ以上何もありません(苦笑)。タクさんの読解力で分からないようなネタは、出来たとしても完全な失敗作です。
No1ファンという名前をみて一瞬ドキッとしました(すいません嘘です。すぐにCinosさんだと分かりました)。
後悔したということは愛が足りなかったのかも?
ありがとうございます。正直ひねりのない作品ですが、直球勝負ということで……。
激安でもいりません。せめて自信のないカーナビくらいで(次の曲がり角を右……かな?)
ここにある作品を友達に紹介してもいいでしょうか?
読んでいただいてありがとうございます。
友達に紹介――もちろんOKです。でも紹介した友達に「面白くないじゃん」と言われても責任は持てませんが。
でも、お手洗いに行くときでもせめてバスタオルくらいは巻きしましょう(^^
お! 福田さんだ! お久しぶりです!
>せめてバスタオルくらい……
そうですね。大胆な中に見せるちょっとした羞恥心―そういう女性が好きです。