『火事を見るとおねしょをする』
そういう言い伝えを聞いたことがありますか? 元は子供の火遊びをとがめるために使われたものだと聞いたことがあります。
実は、これは単なる言い伝えではなく、本当のことなのです。少なくとも僕にとっては事実です。この言い伝えは、過去にも火事を見るとおねしょをするという、僕と同じ体質の人がいたから発生したものだと思っています。
「あなた、またおねしょですか? 本当、いい歳して……」
「仕方ないだろ。そういう体質なんだから」
「それが分かっているのに、何で消防士になったの……」
あとがき
まえぞうのショートショートへようこそ。全部読み切りで、短い時間で読める小説です。ラジオドラマにも採用されています。少しの間、楽しんでいって下さい。
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2008年02月21日
2008年02月11日
しゃべる電化製品
『コーヒーができました』
『パンが焼けました』
コーヒーメーカーとトースターがほぼ同時に話した。最近ではほとんどの家電製品がしゃべるようになっている。昔のような無機質な電子音を聞くことなどなくなった。
電化製品の声やしゃべり方も本当の人間のようになっている。それだけではない。声質なども細かくチューニングすることができる。自分の好きな声に合わせることができるのだ。普通の人は製品によって声を変え、何がしゃべったのか区別できるようにしている。しかし僕は違う。全部同じ声、アヤの声に合わせている。アヤは一ヶ月前に別れた恋人だ。完全にふられたのだが、まだ忘れることができない。そこで寂しさを紛らわすため、声だけでも聞きたいと、電化製品の声を全部アヤの声にしたのだ。
しかし、最近はこの声が気に障るようになってきた。何しろ、電化製品が多すぎて、一日中同じ声を聞いているのだ。それを一ヶ月も続けるといらつくこともある。
『洗濯が終わりました』
ゆっくり朝食を摂ろうと思ったとたんにこれだ。
『録画を開始します』
『9時になりました』
『自動清掃を開始します』
立て続けにアヤの声がする。だんだんいらついてくる。
『音楽を再生します』
『食器の乾燥が終わりました』
今日はいつも以上に声が続く。本気でいらいらしてきた。
『電話です』
まただ。とにかく電話をとる。
「もしもし、私……アヤ。もう一度やり直せない?」
また同じ声。本気で腹が立ち大声で叫んだ。
「もう嫌だ! 聞きたくない!」
『電話が切れました』
決めた。今日中に声を全部変えてやる!
あとがき
『パンが焼けました』
コーヒーメーカーとトースターがほぼ同時に話した。最近ではほとんどの家電製品がしゃべるようになっている。昔のような無機質な電子音を聞くことなどなくなった。
電化製品の声やしゃべり方も本当の人間のようになっている。それだけではない。声質なども細かくチューニングすることができる。自分の好きな声に合わせることができるのだ。普通の人は製品によって声を変え、何がしゃべったのか区別できるようにしている。しかし僕は違う。全部同じ声、アヤの声に合わせている。アヤは一ヶ月前に別れた恋人だ。完全にふられたのだが、まだ忘れることができない。そこで寂しさを紛らわすため、声だけでも聞きたいと、電化製品の声を全部アヤの声にしたのだ。
しかし、最近はこの声が気に障るようになってきた。何しろ、電化製品が多すぎて、一日中同じ声を聞いているのだ。それを一ヶ月も続けるといらつくこともある。
『洗濯が終わりました』
ゆっくり朝食を摂ろうと思ったとたんにこれだ。
『録画を開始します』
『9時になりました』
『自動清掃を開始します』
立て続けにアヤの声がする。だんだんいらついてくる。
『音楽を再生します』
『食器の乾燥が終わりました』
今日はいつも以上に声が続く。本気でいらいらしてきた。
『電話です』
まただ。とにかく電話をとる。
「もしもし、私……アヤ。もう一度やり直せない?」
また同じ声。本気で腹が立ち大声で叫んだ。
「もう嫌だ! 聞きたくない!」
『電話が切れました』
決めた。今日中に声を全部変えてやる!
あとがき
2008年02月07日
分子の話
「お父さん。分子ってなぁに?」
息子が聞いてきた。そういうことに興味を持つ年頃になったと思うと、父親として嬉しい。それに私は化学者だ。自分の専門分野に子供が興味を示したということで、特別感慨深い。
「まわりを見渡してごらん。色んな物質……モノがあるだろう? これらはみんな分子という眼に見えない小さなものからできているんだ。分子は原子というものがいくつか繋がってできているんだけど、この分子がそのモノの性質を示す最小単位……一番小さいものなんだ」
小学生用に分かりやすく説明したいという気持ちと、化学者としての正確に説明したいという思いが交錯して、どのように説明すべきか迷ってしまう。
「とにかく、全部分子からできているんだ。いや、全部といっては語弊があるけど、共有結合という方法で結合しているものは全部分子と言ってもいい」
だんだん話に熱が入ってきた。何を言っているのか自分でも分からなくなる。
「例えば、コップ一杯の水があるだろう? あの中には、水分子が10の24乗って言っても分からないか……一億の一億倍の……とにかく沢山の水分子が入っている。分子っていうのはそれほど小さいんだ。分子の形ってのも面白くて、水の分子はブーメランみたいな形をして………………(中略)………………それほど分子って大事なものなんだ。わかったか?」
息子はきょとんとした顔をしている。ちょっと小学生には難しすぎる説明になってしまった。ここで理解できなかったせいで化学に興味を失ってしまったりしないだろうか? そんなことを考えていると、息子がまた聞いてきた。
「じゃあ、分母ってなぁに?」
あとがき
息子が聞いてきた。そういうことに興味を持つ年頃になったと思うと、父親として嬉しい。それに私は化学者だ。自分の専門分野に子供が興味を示したということで、特別感慨深い。
「まわりを見渡してごらん。色んな物質……モノがあるだろう? これらはみんな分子という眼に見えない小さなものからできているんだ。分子は原子というものがいくつか繋がってできているんだけど、この分子がそのモノの性質を示す最小単位……一番小さいものなんだ」
小学生用に分かりやすく説明したいという気持ちと、化学者としての正確に説明したいという思いが交錯して、どのように説明すべきか迷ってしまう。
「とにかく、全部分子からできているんだ。いや、全部といっては語弊があるけど、共有結合という方法で結合しているものは全部分子と言ってもいい」
だんだん話に熱が入ってきた。何を言っているのか自分でも分からなくなる。
「例えば、コップ一杯の水があるだろう? あの中には、水分子が10の24乗って言っても分からないか……一億の一億倍の……とにかく沢山の水分子が入っている。分子っていうのはそれほど小さいんだ。分子の形ってのも面白くて、水の分子はブーメランみたいな形をして………………(中略)………………それほど分子って大事なものなんだ。わかったか?」
息子はきょとんとした顔をしている。ちょっと小学生には難しすぎる説明になってしまった。ここで理解できなかったせいで化学に興味を失ってしまったりしないだろうか? そんなことを考えていると、息子がまた聞いてきた。
「じゃあ、分母ってなぁに?」
あとがき

