まえぞうのショートショートへようこそ。全部読み切りで、短い時間で読める小説です。ラジオドラマにも採用されています。少しの間、楽しんでいって下さい。

ブログコミュニティ「edita(エディタ)」に参加しました。ショートショート倶楽部というコミュニティーを作っています。ショートショート好きのブロガーさん、是非参加して下さい。ブログでショートショートを公開している方は、エディター登録して頂ければ嬉しいです。


2007年11月26日

バイオハザード

 大きな地震が、その研究施設をおそった。

「大丈夫か!」

「何か異常がないか、すぐに点検しろ!」

 施設内に大きな声が響く。所員が慌てるのも無理はない。ここは、遺伝子操作の研究施設なのだ。遺伝子操作によって生み出された、有害な細菌などを多く扱っている。それらが、施設外に漏れることがあると大変なことになる。いわゆるバイオハザードだ。

「ナンバー6ラボの壁に亀裂が入っています!」

「何? で、漏洩物は?」

「BO17E2が、漏れ出した可能性があります!」

「何だと……、そんな……」

 危惧していたバイオハザードが発生してしまったのだ。BO17E2は遺伝子操作によって産み出された感染力が非常に強い細菌だ。薬品に対する耐性も強く、治療薬は全くない。そんな細菌が、束縛から解き放たれたのだ。

 BO17E2は、瞬く間に全世界に広がった。そして、全人類が発症してしまった。絶対に治ることのない不治の病を。

「くそ! 痒い! 何とかならないのか!」

「うるさい! 痒いのは、お前だけじゃないんだぞ! みんな我慢しているんだ!」

「そんなこと言ったって、これは我慢できない!」

BO17E2――強力な感染力と薬耐性を持つ白癬菌。このときから、人類は水虫を抱えたまま生きていくことを余儀なくされた。



あとがき
posted by まえぞう at 18:16| Comment(13) | TrackBack(0) | SFっぽいショートショート

2007年11月10日

双子のパラドックス

「何! HKR27を双子のパラドックスの証明に使うだと! 何を馬鹿なことを言ってるんだ! 最新のロケットをそんな意味のないことに使うだなんて」

「HKR27は、光の速さの99.5%の速度まで加速、運行し、同じ速度で戻ってくることができます。この場合、往復して帰ってくるHKR27の船内の時間は、地球上での経過時間の10分の1になります。一般相対性理論からの帰結です。パラドックスでも何でもない。そして、それが正しいという証拠は山ほどあります」

「ああ、そんなことは常識だ。だから意味がないと言っているんだ。前回のHKR26に積んだ原子時計の進み方でも完全に証明された筈だ」

「そうです。常識です……物理学者の間では。でも、一般の人の意識はどうでしょう。もうすぐ亜光速運航の時代が始まります。しかし、人々の意識は昔のままなのです。我々がいくら証拠をだしても、原子時計の遅れを示しても、人々の意識はかわりません。イメージが湧かないのです。このまま亜光速運航が始まったら、人々は戸惑い大混乱が起きるでしょう」

「それで、双子を使う訳か……」

「そうです。双子のひとりをHKR27に乗せます。もうひとりは地球で暮らします。地球の時間で10年後に、HKR27が地球に戻るのです。HKR27の中では、一年しか時間が経っていません。そして、双子を比較した映像を全世界に流すのです。ロケットに乗っていた方が明らかに若いということを。そうすれば、人々もイメージが湧く筈です」

「それはそうかもしれないが……」

「HKR27には、人間ひとりと一年間分の食料、水、酸素を運ぶ能力があります。今やらなければならないのです。HKRが帰ってくる10年後、それが亜光速時代の幕開けになるのです。全人類を新しい時代に適応させるという重大な役目を果たすのです」

「分かった。そうしよう」

 こうして、双子のパラドックス計画が開始された。実験に選ばれたのは、二十歳の一卵性双生児の兄弟だ。HKR27出航前のふたりを映像に残す。もちろん瓜二つで、見分けが付かない。
 そして、兄の方がHKR27に乗ることになった。その間弟は地球で暮らす。もちろんふたりには、多額の報酬が払われた。

 そして、兄を乗せた最新型ロケットHKR27が出航した。

「これで、人々の意識が変わる。十年後、歳をとった弟と、若々しい兄を眼にすることで、人間の意識が変わるのだ。言ってみれば、新しい時代に向けての人類の進化だ」

 実験の計画者は、そう高らかに宣言した。


 地球に残った弟は、実験の報酬で貰った金で何年間も遊びまくっていた。彼の友達は言った。

「お前、全然変わらないな。昔のままだ」

「当たり前さ。毎日楽しいことだけをして暮らしているんだ。心が若々しいんだよ。だから歳を取ったように見えない」

 一方、ロケットに乗った兄は、苦悩していた。狭い宇宙船の中での孤独な生活。今にでも頭がおかしくなりそうだった。そのため、短い期間で彼の外見は急速に老けていった。

 そして、地球時間で十年後、HKR27は地球に帰還した…………。


あとがき
posted by まえぞう at 17:20| Comment(6) | TrackBack(1) | SFっぽいショートショート

2007年11月03日

日本語変換ソフト

究極の日本語変換ソフト誕生

 わが社では、究極とも言える新日本語変換ソフト『へんかん君』の開発に成功した。文脈を完全に解析し文章の意味まで理解できる『意味読み込みエンジン』を搭載したことにより、誤変換の解消が可能となった。『意味読み込みエンジン』では、文章の意味だけでなく、言葉の表現から、ビジネス文書、プライベートの文書などの文書の種類や、入力している人の年齢、性別などを瞬時に把握できる。これらの情報から、変換ワードを的確に推測できることから、誤変換が全くない、完全な日本語変換ソフトが完成した。
 これまで、入力の妨げになっていた誤変換がなくなることにより、入力効率が格段に進歩し、日本語入力の新しい時代に突入する。
 画期的な日本語変換ソフト『へんかん君』、いよいよ来月から全国一斉に半場医科医師!!


あとがき
posted by まえぞう at 10:44| Comment(8) | TrackBack(0) | 現代劇風ショートショート