まえぞうのショートショートへようこそ。全部読み切りで、短い時間で読める小説です。ラジオドラマにも採用されています。少しの間、楽しんでいって下さい。

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2007年06月27日

儲け話

「おい、そんなに真面目に仕事なんかするな」

「あ、先輩! どうしたんですかいきなり」

「いや、お前が仕事ばっかりしているからな。仕事なんてしなくていいんだぞ。そんな時間があったら金を儲ける方法を考えろ。楽して儲ける方法を」

「楽して儲かるなんて、ありえませんよ。旨い話には気をつけろって親にも言われてるんですよ」

「馬鹿だな。旨い話に騙されるのは、金の出所がよく分からない話を信用するからだ。出所がはっきりしていて、いくらでも湧いてくる金があるだろう? そいつを頂戴すればいいんだよ」

「いくらでも湧いてくる?」

「そうだ。俺たちのように選ばれた人間だけが手にすることのできる金だ。いくら頂戴しても大丈夫な金」

「そのお金の出所って……」

「決まってるだろう? 国民の税金ってやつだよ」


あとがき
posted by まえぞう at 17:58| Comment(7) | TrackBack(2) | 現代劇風ショートショート

2007年06月23日

悪魔vs人間

「もっと殺せ!人間どもを恐怖の底に叩き落とせ!」

 俺は悪魔だ。最近、人間どもがあまりにも偉そうにしているのが気に食わなくなった。それで、人間を支配してやろうと思いたったのだ。
 俺は人の悪い心に付け込んで、その人間を操ることができる。まず何百人かの人間を操って世界中で凶悪犯罪を起こさせた。さしずめ悪魔の化身と言ったところだ。人間どもは国際的な暴力組織かテロ集団の仕業だと思ったようだ。徹底的に反抗してきた。悪魔の化身と人間たちの全面抗争のような状態になった。化身たちも沢山死んだが、そんなことは関係ない。死んだら新たに他の人間を操るだけのことだ。一度に操ることができる人数には制限があるが、補充はいくらでもきく。

 そんな状態が二年ほど続いた。実は人間を操るのには大変なパワーが必要だ。俺のパワーは尽きかけていた。しかしそれも計算のうちだ。
 人間どもが徹底抗戦しているのは、相手が人間だと思っているからだ。俺が姿を現して、敵が悪魔だとわかれば敵わないと思って平伏す筈だ。この二年間でそれだけの恐怖は与えてきた。後はパワーを使わなくても人間を支配できる。

 今、各国の首脳が集まって会議を開いている。議題はもちろん国際的な凶悪犯罪組織対策だ。もうすぐ会議が終わり、声明が発表される。多分、凶悪な人間には屈しないとかいう内容だろう。いいタイミングだ。その声明発表の直後に俺が姿を現し、本当の敵は人間でなく悪魔なんだと知らしめる。そうすれば、人間たちはショックを受け、抵抗する気力を失う筈だ。

 声明が発表された。それを聞いて、俺は自分の甘さを悟った。俺が思っていた以上に人間は強かったようだ。敵が悪魔だとしても抵抗を止めるような弱気な存在ではなかった。

 俺は、その声明の最後の部分を思い返した。

『我々は、決して暴力に屈しない。敵がどんなに強大でも、あくまでも抵抗を続ける』


あとがき
posted by まえぞう at 17:18| Comment(3) | TrackBack(1) | SFっぽいショートショート

2007年06月20日

再開

 大宇宙船団が地球を目指して進んでいる。五百年前、戦争によって放射線まみれになった地球を脱出した人類が、戻ってきたのだ。
 戦争のきっかけは、各地で同時期に多発した領土問題だった。局所的な戦争があちこちで始まり、それが全世界に広まった。最終的には核戦争にまで至り、地球は人が住める状態ではなくなった。生き残った人類は宇宙に旅立った。
 五百年が過ぎ、地球の汚染が回復したため、故郷に戻ることにしたのだ。この五百年の間に、人口も増えて戦争前の水準に戻っていた。
 宇宙船団は、放射能汚染が浄化され、緑溢れる星に戻った地球に着陸した。自分たちの祖先の国があった場所に別れて。日本船団は日本へ、アメリカ船団はアメリカへ、中国船団は中国へ……。もちろん、戦争の元となった領土問題については、話し合いで解決済みだ。

 しばらく経って、問題が浮上した。この五百年の間に地形が変わった場所が数多くあったのだ。新たに浮上した島もあった。そういう場所でいざこざが発生し始めた。

「ここは俺たちの国の領土だ!」

「いや!俺たちの領土だ!」

 領土をめぐって局所的な戦争があちこちで始まり、それが全世界に広まった。最終的には…………。


あとがき
posted by まえぞう at 18:54| Comment(8) | TrackBack(0) | SFっぽいショートショート

2007年06月16日

どっきり番組

 楽屋でテレビを観ていると、急に画面が変わった。臨時ニュースらしい。緊張した表情のアナウンサーがアップで映し出される。

『先ほど、日本時間15時、国連本部に宇宙人からの宣戦布告のメッセージが届きました。宇宙人は、地球人を皆殺しにすると宣言した模様です』

 廊下で多くの人が走り回る音が聞こえて、騒がしくなった。俺は、少しの間呆然としていた。というより、呆然としたふりをしていた。
 俺のような芸人は、よくどっきり番組の標的にされる。今回も間違いない。絶対にどっきりだ。それならば、しばらく呆然としていた方がいいと判断したのだ。
 急に楽屋のドアが開いて、ADが叫んできた。

「今日の撮影は中止です!!」

 今日は、聞いたこともない番組の収録のために、テレビ局に来たのだ。それも、どっきりだと思った理由のひとつだ。どうせ、俺をおびき出すためのニセ番組だろう。

「外に逃げろ!!」

 大きな声が聞こえた。そろそろ、慌ててパニックになった振りをした方がいい。どっきり番組は、面白くなければ放送されない。みんな、俺の慌てる姿を見たがっているのだから、それに合わせなければならない。
 俺は、楽屋を飛び出した。廊下は、パニックになった人で一杯だった。かなり手の込んだどっきりのようだ。俺は人を押しのけて、エレベーターに乗り込んだ。みんなが期待しているように行動しなければならない。
 一階に到着すると、すぐに建物の外に飛び出した。とにかく、慌ててパニックになったふりをするのだ。
 外も人で溢れかえっていた。一体、何人のエキストラを使っているのだろう。これほど、手の込んだどっきりは初めてだ。
 空を見上げて驚いた。何台もの円盤が空をとんでいたのだ。どんなトリックを使ったのかわからない。本当に手が込んでいる。
 円盤から、次々と光線が発射される。その光線に当たった人は、その場に倒れていく。倒れ方も迫力がある。エキストラとは思えないほどの演技力だ。これだけ凄いどっきりに登場できるというのは、芸人冥利に尽きるというものだ。俺は、パニックになった振りをして、必死になって逃げまくった。周りの群衆より目立つように、手振り身振りを大きくし、大声で叫び続けた。

 そのとき、円盤から発射された光線が俺に当たった。そのとき、これまでに感じたことのない衝撃を全身に感じた。だんだん意識が遠くなっていく。そのとき初めてわかった。これはどっきりなどではない。本当に宇宙人が攻めてきたのだ。光線に当たって倒れた人たちは演技などではなかったのだ。――そして、俺は意識を失った。

 一時間後、国連本部に再び宇宙人からのメッセージが届いた。

『お騒がせしてすいません。先ほどの宣戦布告は嘘でした。我々は宇宙第一テレビのものです。宇宙の辺境に済む人類にどっきりを仕掛けるという番組の撮影だったのです。あの光線は、しばらく気を失うだけで命には全く影響ありませんので、ご安心下さい。お陰でいい映像が撮影できました』

 この番組は宇宙中で放映され、評判を呼んだようだ。特に、日本という国のある芸人の慌てっぷりが、最も人気だったそうである。


あとがき
posted by まえぞう at 14:02| Comment(10) | TrackBack(0) | SFっぽいショートショート